Flux quantization and Josephson effect

「磁束の量子化」と「ジョセフソン効果」は、この巨視的波動関数の形成によって生じる効果で、超伝導が巨視的な量子現象であることを表します。磁束の量子化は、超伝導リングの内側を貫く磁束がマイスナー効果によってリングの内側に閉じ込められると、磁束量子(Φ0=h/2e)と呼ばれる値の整数倍に磁束が離散化される効果を表します(Φ=nΦ0)。この効果は、原子内電子の波動関数に適用される”ボーアの量子化条件”を超伝導の巨視的波動関数に適用すると自然に説明されます。一方、ジョセフソン効果は、2つの超伝導体を近づけると、巨視的波動関数の位相部分の空間変化量によって決まる超伝導電流が2つの超伝導体間に流れ、微視的にはゼロ電圧で生じるクーパー対の量子トンネル効果として説明される効果です。
 磁束の量子化とジョセフソン効果は、超伝導現象を量子情報処理技術や高感度計測技術に応用する際に重要な役割を果たす基本的な性質です。特にジョセフソン接合の物理は、1980年代に確立した巨視的量子トンネル(MQT)に関する研究成果に基づき、1999年以降、人工的な原子状態を意味する” ジョセフソン量子ビット ”が実現され(例えば、Y. Nakamura et al. Nature, 1999)、現在の超伝導回路にまで発展し続けています。北野研究室において、微細加工技術を駆使して様々なジョセフソン接合素子を作製し、その特性を研究する理由はここにあります。