坂上研究室

Sakaue Laboratory

RESEARCH


高分子の絡み合い効果についての研究


「荷物を縛る」、「ネクタイを結ぶ」、はたまた、「糸が絡まる」。ひもの「絡み合い」は誰もが知っている身近な現象です。同様の「絡み合い」は、ミクロなひも(=高分子)にも見られます。そして、その記述と理解は、高分子物理学における最も挑戦的な課題の一つとなっています。ひもはすり抜けをすることが出来ないため、絡み合いの生成消滅には、必ずひもの端点が関わってきます。では、端のない高分子、すなわち環状の高分子はどのような振る舞いをするのでしょうか。
このような視点から、高分子系における絡み合い効果の解明を目指して環状高分子の研究を行っています。環状高分子の記述は、トポロジー(結び目、絡み目理論)とも深く関連しており、物理、数学の両面から興味深い問題がたくさんあります。

DNAの力学物性についての研究


生体内で生み出されるDNAは長い高分子の代表選手です。細胞内からDNAを取り出し、蛍光色素で染色すると、光学顕微鏡の下にDNA一分子が揺らぎながら動く様子を観察することが出来ます。また、ミクロなピンセットとでもいうべき実験手法を用いて、DNA分子の両端をつまみ、引っ張ったり捩ったりすることも出来ます。DNAにどの程度の力が作用すると、どのような変形や運動が誘起され、また、どのような構造変化が起こるのか。このようなDNAの物性を明らかにする研究を行っています。DNAの振る舞いの普遍的な側面は、捩れ弾性と曲げ弾性を併せ持つ曲線として記述されますが、これは古典的でありながら、新たな話題に事欠くことのないとても魅力的な研究テーマです。

クロマチン動態についての研究


DNAはどのくらい長いのでしょうか?生物種にもよりますが、ヒトの場合、細胞中に含まれる46本のDNAを繋ぎ合わせると、全長は2mにもなります。このような長い高分子が数μm程度の細胞核の中に存在しているなんて、一体、細胞核の中の世界はどのようになっているのでしょうか。DNAとタンパク質の複合体であるクロマチンが、どのように折り畳まれ、また、どの様に動くことが出来るのかは、遺伝子の発現機構に関わる重要な問題です。このような生命現象の根幹に関わる問題について、生物学者と協力しつつ、物理学な立場からの研究を行っています。

メソスケールのソフトマター物理


物質を構成する基本要素である原子・分子。高校では、原子構造を理解するためには、古典力学だけでは不可能で、量子力学が必要となることを学びます。原子・分子の空間スケールをオングストローム(0.0000001 mm)とし、私達の身の回りのスケールがメートル (1000 mm)だとすると、この中間であるマイクロメートル(0.001 mm)くらいの階層には、一体、どのような世界が広がっているのでしょうか? 例えば、細胞内の環境がこのスケールに相当します。このような中間的な「メソスケール」では、熱的、非熱的な「揺らぎ」が顕在化し、この「揺らぎ」はソフトマターの機能発現と密接に関連しています。ソフトマターの揺らぎ、構造、機能といった問題に対し、理論・解析・数値計算を組み合わせ研究に取り組んでいます。