(1)マイクロ波空洞共振器とは

真空中での波長が数十センチメートルから数ミリメートルの電磁波を マイクロ波と呼びます。 周波数で言うと1ギガヘルツから100ギガヘルツ付近の帯域に対応 します。衛星放送や携帯電話(最近ではBlueTuthなどの高速データ通信など)に利用されているのが、このマイクロ波です。

金属の壁で囲まれた空洞はマイクロ波領域の 共振器 として利用でき、「空洞共振器」と呼ばれています(図1参照)。空洞共振器は、以下の利点からマイクロ波領域の物性を高感度に測定する手段としてよく利用されます。

  1. Q値(=共振周波数と半値幅の比)の高い共振器が比較的容易に作れる。
  2. 空洞部分へ試料を挿入したり、空洞壁の一部を試料に置換できる。

物質の複素電気伝導度測定する場合には、Q値が高い円筒形の空洞共振器がよく利用されます。代表的な共振モードであるTE011モードの場合、共振器内の電磁場分布は、図2のようになります。この図からも分かるように、空洞共振器内ではマイクロ波電場の強い位置とマイクロ波磁場の強い位置が互いに異なる性質があります。

空洞共振器

図1 円筒形の空洞共振器

TE011モードの交流磁場

図2(a) TE011モードの交流磁場分布

TE011モードの交流電場

図2(b) TE011モードの交流電場分布

(2)空洞共振器摂動法による物質の複素電気伝導度測定

空洞共振器内のマイクロ波電場の強い位置やマイクロ波磁場の強い位置に微小な被測定物を挿入すると、空洞共振器の共振曲線がわずかに変化します。この変化から挿入した物質の電気伝導度や誘電率、透磁率などを求める方法が 空洞共振器摂動法です。

非測定物を挿入する場所や向きを制御することにより、直流抵抗測定が困難な粉末状物質や電気伝導が異方的な低次元伝導体などの 電気伝導性を調べることが出来ます。 我々の研究室では、現在、この方法を発展させた「マイクロ波顕微鏡」の開発にも挑戦しています。

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