Microwave broadband method
空洞共振器摂動法では、挿入した微小試料のマイクロ波応答に関する温度依存性や磁場依存性を精密に測ることができますが、周波数依存性を得るには複数の共振モードあるいは複数の共振器を用いる必要があります。この場合、周波数を連続的に変化させた場合のマイクロ波応答を得ることはできず、得られる周波数依存性はかなり大雑把なものになってしまいます。 これに対し、マイクロ波ブロードバンド法は、試料の温度や磁場を固定して、マイクロ波周波数を連続的に掃引した場合のマイクロ波応答から試料の複素電気伝導度の周波数依存性を得る方法です。 一般的には、マイクロ波伝送路中に測定試料を挿入し、その反射特性や透過特性から挿入試料の特性を得る方法と見なせますが、電気伝導度などの物質定数を複素量として得るためには反射特性や透過特性の周波数依存性を複素量として測定する必要があり、ベクトルネットワークアナライザー(VNA)という測定装置がよく用いられます。 この場合、試料を挿入したマイクロ波伝送路におけるマイクロ波損失や位相変化が必ず測定量に含まれてしまうので、試料部分の寄与を取り出すための"校正(calibration)"作業が必要となります。室温測定の場合には、VNAを販売する計測器メーカーが用意する専用の校正キットを用いることで校正作業を半自動化できますが、低温で実験する必要がある物性測定では、校正作業に必要な標準試料や校正方法も自分たちで用意する必要があります。 北野研究室では、低温での校正および測定量から複素電気伝導度を得るのが比較的容易な超伝導(または金属)薄膜に対する マイクロ波複素反射率のブロードバンド測定を開発しています(図1参照)。
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