青山学院大学 物理学科 コロキウム

1999年度 第15回

下記の通りコロキウムを企画致しました。講演者の方には、学生や分野の違う方にもわかるレベルから始めて下さるようにお願いしてあります。是非ともご参加下さいますよう、ご案内申し上げます。

なお、今後の予定については www.phys.aoyama.ac.jp/seminars/ を御覧下さい。 また理工学部キャンパスへの交通についてはwww.phys.aoyama.ac.jp/maps/を御覧下さい。
 

(世話人・羽田野 直道・学外からは03-5384-2642・学内からは23107)



講演者:寺崎 一郎 氏(早稲田大学・理工学部)

日時: 1月14日(金) 午後4時半から
場所: 青山学院大学 理工学部(世田谷キャンパス) 一号館 5階 1538号室

講演題目: 熱電変換材料としての層状酸化物 ---NaCo2O4の巨大な熱起電力
要旨:
熱電変換材料とは,固体の熱電気現象を通じて,熱と電気を相互に変換する機能性材料のことである。 熱電変換は (1)老廃物なしで発電可能 (2)メンテナンスフリーで長寿命 (3)廃熱利用などの点でエネルギー・環境問題の一解答になりうる技術であり,近年急速に新物質開発が進められている。 我々は,層状酸化物NaCo2O4が,高温超伝導体なみに低い電気抵抗率(室温で200μΩcm)と,縮退半導体なみに大きな熱起電力(室温で100μV/K) を持つことを発見した。 このことは,この系が温度勾配のもとで電力を発生させうること,すなわち熱電変換材料として有望であることを意味している。 実際この系の熱電特性は,他の酸化物の熱電特性に比べ群を抜いて高い。 しかもこの系のキャリア濃度は従来の熱電変換材料にくらべて二桁から三桁以上大きく通常の金属と同程度である。 それにかかわらず100μV/Kという大きな熱起電力を示すことは,単純なバンド理論にもとづく一電子近似では理解できない。 この系の異常な物性は電子物性だけではない。 この系の熱伝導率は高温超伝導体とくらべて半分以下であり,フォノンの平均自由行程は電子の平均自由行程よりはるかに短いことがわかった。 これは,この系に温度勾配がつきやすいことを意味し,熱電変換効率が高いことを示す。 まさに,NaCo2O4は熱電変換材料のために生まれてきたような酸化物であるといえる。 当日は,最近合成された新熱電変換材料のいくつかを紹介するとともに,NaCo2O4の異常な物性をなるべく平易に解説する。 また,層状酸化物による熱電変換材料の設計指針について提案したい。


共催・青山学院大学 理工学会 物理学分科会