青山学院大学 物理学科 コロキウム

1999年度 第2回

下記の通りコロキウムを企画致しました。講演者の方には、学生や分野の違う方にもわかるレベルから始めて下さるようにお願いしてあります。是非ともご参加下さいますよう、ご案内申し上げます。

(世話人・羽田野 直道 03-5384-1111 内線 3107>)



講演者: 桃井 勉 氏(筑波大学 物理学系)

日時: 7月2日(火) 午後4時から
場所: 青山学院大学 理工学部 一号館 一階 1113号室

講演題目: 2次元磁性体におけるInsulator-Superfluid転移としての磁化プラトー
要旨:
磁性体の磁化曲線中にプラトー構造が現れる例が以前から知られていた。 これは磁場中でスピンが collinearな構造を持つ状態が現れ、 プラトーを作ると理解されてきた。しかし近年、このような 古典スピンの描像では理解できない磁化プラトーが観測されるようになった。 この講演では、これらの磁化プラトーが、 スピンを量子スピンとして扱うことにより磁性粒子(励起)の Insulator-Superfluid転移として理解できることをお話しします。 今回、以下の3種類のスピンモデルにおける磁化プラトーの出現 (の理論的議論と予言)を紹介します。

(1) 三角格子上の反強磁性ハイゼンベルグ模型と多体交換模型

(2) [SrCu2(BO3)2のモデルと思われる] Shastry-Sutherland格子上の反強磁性ハイゼンベルグ模型

(3) [CaV4O9のモデルと思われる] 1/5-depleted 格子上の反強磁性ハイゼンベルグ模型

この3つの系では磁性励起の種類が異なり、特に(2)と (3)の系の低エネルギー励起には量子効果が重要である。 磁性粒子についての有効ハミルトニアンを議論することにより、 これら3つ全てで磁化プラトーが出現し得ることが分った。 いずれの場合も磁場をかけることにより生じる磁性粒子(励起)が Commensurateになる密度の時に粒子間斥力によりInsulator-Superfluid転移を 起こすことが分る。この転移が磁化プラトーとして観測される。 これまで実験で観測されていない磁化プラトーの出現を予言しつつ、 磁場によって引き起こされる相転移の振る舞いを議論します。


共催・青山学院大学 理工学会 物理学分科会