講演者:宮原 慎 氏(Asia Pacific Center for Theoretical Physics) 日時:9月 14日(金) 午後5時00分から 場所: 青山学院大学 理工学部(相模原キャンパス)L棟6階 L603室 題目: 「らせん磁性マルチフェロイックス物質における非相反な方向二色性」 要旨:   固体中では, 外部印加された磁場は磁化を, 電場は電気分極を誘起するが, スピンと電気分極が強く結合するマルチフェロイックス系の場合には, 電場に よって磁化を, 磁場によって電気分極を制御することができる(電気磁気効果). このようなスピンと電気分極が強い結合を示す系では, 磁場活性なマグノン励 起(いわゆる磁気共鳴)に加えて, 電場活性なマグノン励起(エレクトロマグノ ン)が存在することが知られており, 注目を集めている. 典型的なマルチフェロイックス系として, サイクロイド型のらせん磁性体があ る. この系では, スピン流機構により, 磁気秩序に伴う電気分極が出現する. また, 動的な電場によりエレクトロマグノンが励起されることが知られている. 外部磁場を印加し, コニカルな磁性状態を誘起すると, スピン流機構による電 場活性モードと従来の磁気活性モードが同一のマグノンを励起するようになり, 電場応答と磁場応答の干渉効果(交差相関効果)を, 光吸収の非相反な方向二色 性(光の吸収率が進行方向によって異なる)として観測できることを示した[1]. この結果により, らせん磁性体RMnO3系で観測されているいくつかのエレクト ロマグノンモードから, スピン流機構によるモードを特定することができた. 更に,従来より知られるらせん磁性体の磁気共鳴モードが, 一般的に磁気光学 効果を示すことが明らかとなった. [1] S. Miyahara and N. Furukawa: J. Phys. Soc. Japan 81 (2012) 023712. ---------------------------------