講演者:宮原 ひろ子 氏(東京大学宇宙線研究所) 日時:6月 29日(金) 午後4時30分から 場所: 青山学院大学 理工学部(相模原キャンパス)L棟6階 L603室 題目: 「太陽活動・太陽圏環境の変動と地球気候」 要旨:  本稿では、樹木年輪や氷床コア中の宇宙線生成核種(炭素14,ベリリウム10) の分析から明らかになりつつある、太陽活動と太陽圏環境の長期的な変動につ いて報告する。また、古気候学的手法に基づいて復元された過去の気候変動や 現代の気象観測データから明らかになりつつある、太陽活動・太陽圏環境と地 球気候との関連性についても報告する。  黒点の観測が開始されてから間もなく発生したマウンダー極小期(西暦1645- 1715年)とよばれる長期無黒点期(グランド・ミニマム)における太陽活動と 地球気候との比較からは、地球気候が、太陽放射のみならず、太陽の磁場活動 の影響を強く受けている可能性が示唆された。これは、太陽圏に広がる太陽磁 場の強度や大規模構造の変化が、銀河宇宙線の遮蔽を通して間接的に地球気候 に影響しているものと考えられる。銀河宇宙線が気候に作用するメカニズムは 未解明であるが、雲核の形成を通して、あるいは既存の雲粒やエアロゾルへの 電荷の供給を通して、雲の成長や発達に影響している可能性があるとされてい る。一方、現代の気象観測データからは、太陽活動の影響が、熱帯赤道域の雲 活動に強く現れていることも見えつつある。  太陽圏システムという視野で地球の気候システムをとらえることで、どのよ うな気候の変動成分が説明可能なのか、また、今後どのような展開が期待され るかについて議論する。 ---------------------------------