講演者:岩尾 慎介 氏(青山学院大学理工学部) 日時:4月 27日(金) 午後4時45分から 場所: 青山学院大学 理工学部(相模原キャンパス)L棟6階 L603室 題目: 「トロピカル曲線とソリトン」 要旨:  通常の加減乗除を用いるかわりに、max操作(2数の大きいほうを選ぶ操作) と足し算・引き算のみを用いて展開される数学を、トロピカル数学という。一 見するとトロピカル数学はあまりにも単純すぎて、そこから面白い数学が展開 されるとは思えない。しかしながら近年、トロピカル数学が、古くから知られ る代数幾何学の問題を解くのに有効な手段であることが知られてきている。 本講演では、トロピカル曲線を用いた超離散ソリトン方程式の解法を紹介する。 ソリトンとは、微分方程式を満たす孤立波のことであり、形状を保ちながら運 動する、複数のソリトンが衝突してもしばらくすると形状が回復する、など、 正弦波とは異なる挙動を示す。数学的には、正弦波は三角関数で記述されるの に対し、ソリトンはテータ関数と呼ばれる特殊関数を用いて表現される。三角 関数が、円という図形と切っても切り離せない関係にあるように、テータ関数 は、リーマン面と呼ばれる図形と大変深い関係にある。 ここで、リーマン面の代わりにトロピカル曲線という全く新しい図形を用いる ことにしよう。そうすると、従来のソリトン理論のトロピカル数学版とでもい うべき、新しい波の運動方程式が登場する。これが超離散ソリトンである。超 離散ソリトンの理論を通じて、トロピカル数学が、実際の数学・物理の問題に いかに関係しているかを説明したい。 ---------------------------------