講演者:堀田 知佐氏(京都産業大学) 日時:2月 18日(月) 午後4時30分から 場所: 青山学院大学 理工学部(相模原キャンパス)L棟6階 L603室 題目: グランドカノニカル数値解析〜バルクな物理量を「直接」観る 要旨: 有限系の数値計算は、いまや、凝縮系物理の理論研究に不可欠なツールとなっている が、手法に依らずその行く手を常に阻むのが、有限サイズ効果と境界効果である。 我々は、ここ数年来の研究をもとに、この二つの負の効果を有効的に除去し、 数十サイトの有限格子系の量子多体問題において、バルクの物理量を擬似的に 10$^{-4}$の精度で得る解析方法を編み出した。具体的には, 端の開いた境界条件の もと、系の中央でエネルギースケールを最大にし、端で零とするような緩やかな スケーリングを行う。スケーリング関数には、西野らが考案したsine$^2$関数[2] を積極的に利用し、零エネルギーの端状態を生成する。この端状態が有効的に系の 中央部分と断熱的に接続され、端状態をバッファとして系の中央部分をバルクな状態に 変分的に近づけることが可能になる。この方法論により、これまで階段状でしか 得られなかった量子スピン系の磁化過程や、電子系の粒子-化学ポテンシャル曲線が 滑らかな曲線として、可視レベルで厳密に再現されることが明らかになった。 本講演では、Wilsonの繰り込み群の考えをもとに、この手法のメカニズムの解説を 行うとともに、2次元への応用として[3]三角格子やカゴメ格子で得られた 磁化過程も紹介する。 [1] C. Hotta and N. Shibata, Phys. Rev. B 86, R041108 (2012). [2] A. Gendiar, R. Krcmar and T. Nishino, Prog. Theor. Phys. 122, 953 (2009); Prog. Theor. Phys. 123, 393 (2010). [3] C. Hotta, S. Nishimoto and N. Shibata, submitted to Phys. Rev. B. ---------------------------------