講演者：大熊　哲 氏（東京工業大学大学院 理工学研究科物性物理学専攻）
日時：１０月　７日（金）　午後４時３０分から
場所： 青山学院大学　理工学部（相模原キャンパス）Ｌ棟６階　Ｌ６０３室

題目： 「駆動された超伝導渦糸系における新しい動的相転移」



要旨：
　ランダムなピン止め中心をもつ超伝導渦糸格子系に, 駆動力となる電流を
印加していくと, ある閾値で渦糸はピン止めからはずれ(depinning), そ
の後は駆動力, 渦糸間の斥力, ピン止め中心からの引力, そして粘性力で決
まる運動をする。低速域では乱れたplastic flow[1]となるが, 速度の増
加と共に渦糸系が感じる動的ピン止め力は弱まり, 渦糸間の相互作用だけで
決まるAbrikosov格子の秩序が回復する。これを動的秩序化という[2]。本
講演では, 駆動した渦糸系で最近見出した新しい非平衡ダイナミクス・動的
相転移について報告する。
試料はアモルファスMoxGe1-x膜である。まず渦糸格子を高速で並進駆動さ
せたときに現れる, 速度増大に伴う格子方位のスイッチング現象[3], 円板
型試料で観測された回転する渦糸格子リング[4],および量子ゆらぎ[5]によ
る, 駆動された渦糸格子の動的量子融解[6]について紹介する。つぎに渦糸
を低速で駆動し, 個々の渦糸を互いに衝突しながら運動する多粒子系とみな
せる領域で見出した, 可逆-不可逆転移, absorbing転移, そしてdepinning
転移という3つの新しい動的相転移[7]について報告する。

[1] SO et al., PRB 77, 212505 (2008). 
[2] Y. Togawa et al., PRL 85, 3716 (2000): SO et al., PRB 76, 172503 (2007): 大熊, 井上, 小久保, 固体物理44, 1 (2009). 
[3] A. Schmid, W. Hauger, JLTP 11, 667 (1973): S.O. Valenzuela, PRL 88, 247003 (2002): H. Matsukawa et al., JPCS 89, 012007 (2007). 
[4] SO et al., PRB 80, 230501(R)(2009). 
[5] SO et al., PRL 86, 3136 (2001): 91, 067001 (2003). 
[6] SO et al., PRB 83, 064520 (2011): 80, 132503 (2009). 
[7] SO, Y. Tsugawa, A. Motohashi, PRB 83, 012503 (2011). 
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