講演者:野村 竜司 氏(東京工業大学理工学研究科) 日時:6月 10日(金) 午後4時30分から 場所: 青山学院大学 理工学部(相模原キャンパス)L棟6階 L603室 題目: 「不規則媒質中での量子固体の結晶化に見られる動的転移と臨界性」 要旨:  一般に多孔質中では融解圧の上昇や結晶化温度の降下など、共存条件が バルク状態から変化することが知られている。しかし相転移が進行する動 的過程は良く分っていない。我々はシリカエアロジェルという、シリカ粒 子がナノメートル域でフラクタル的な構造を持つ多孔質中で、ヘリウム4 の結晶化がどの様に進行するかを直接に可視化して調べた。エアロジェル は空孔率が非常に大きく透明であり、乱れの元で進行する一次相転移の動 態を直接観測できる。またヘリウム4を用いることで、多孔質中の質量輸 送は超流動によって担われ、幅広い温度域で粘性の影響を排除した実験が 可能になる。 高温域では固液界面が、ほぼ一定の速度で進行する滑らかな成長であった。 シリカ粒子によるエネルギー障壁を、熱揺らぎによって超えていると思わ れる。しかし650 mKを境として低温では結晶化は間欠的になった。固体 が雪崩的にエアロジェル中で核生成した。エネルギー障壁を量子トンネル 効果で乗り越える量子的成長の可能性がある。また低温域での雪崩のサイ ズ分布を調べたところ、冪的依存性を示し臨界的振舞いが見られた。量子 的成長と思われる低温極限で、このような自己組織化臨界現象が見られた とすると興味深い。 R. Nomura, A. Osawa, T. Mimori, K. Ueno, H. Kato and Y. Okuda, Phys. Rev. Lett. 101, 175703 (2008) ---------------------------------