講演者:宮野 雅司 氏(青山学院大学理工学部化学・生命科学科) 日時:6月 3日(金) 午後4時30分から 場所: 青山学院大学 理工学部(相模原キャンパス)L棟6階 L603室 題目: 「タンパク質結晶構造で動きやすい水・脂質を見る」 要旨:  近年のタンパク質の多様な生産・結晶化技術の進展と、強力な放射光を 使って細く絞ったマイクロビームによる回折データ測定などの技術開発に より、大量生産と大きな結晶の成長が大変困難のため立体構造解析が進ん でこなかった膜貫通型タンパク質についてもこれまでに200を超える新奇 構造が解析された。継続した高分解構造解析努力により、アクアポリンで は原子分解能結晶解析結果が報告された。こうした高分解能での解析は、 低中分解能では見ることの出来なかったものが見えてくる。マルチコンフ ォーマー以外には、よく見えないという理由だけで必要以上に関心が薄か った非共有結合した水分子そして脂質・界面活性剤分子もより多く特定で きる。  私たちは、喘息などの原因物質ロイコトリエン産生に責を負うロイコト リエンC4合成酵素の結晶構造を最初3.3Å分解能で報告した。その後の結 晶化条件の改良などにより、現在は最高で1.9Åで解析できた。ロイコト リエンC4合成酵素の結晶は結晶系によらず、結晶中ではどれもホモ3量体 が4つ集まったテトラポッド型の特異な構造ユニットをつくる。この基本 構造から、これまでの膜タンパク質結晶構造より多くの、可溶化・結晶化 に用いた界面活性剤分子と、水分子に由来する電子密度を可視化した。 こうしたタンパク質の高分解能解析、超高分解能結晶構造解析によって見 えてきた水・脂質の構造とタンパク質の構造と機能への寄与について改め て概観することで何か新しいことがわかるか考えてみたい。 Seeing is believing!! ---------------------------------