講演者:藤原 義久 氏(兵庫県立大学大学院シミュレーション学研究科) 日時:1月 23日(月) 午後4時30分から 場所: 青山学院大学 理工学部(相模原キャンパス)L棟6階 L603室 題目: 「大規模な経済ネットワークにおける連鎖破綻と大森則」 要旨:  生産、金融、労働が関わる経済ネットワークでは、システムの一部で生じた破 綻が全体に波及して大きな問題を生じることがある。リーマンショックによる 金融システムの不安定化、震災によるサプライチェーンの寸断はその顕著な例 である。企業をノード、取引をリンクとする生産ネットワークは、ノードの数 が数百万にものぼる巨大なネットワークを形成している。1リンク先だけでな く,2リンク以上先で起こった破綻は自分の近傍にまで伝播する可能性、すな わち連鎖リスクがある。このリスクは、仕入・販売、売掛・買掛、貸出・借入 などの信用関係を通じての破綻の連鎖、すなわちシステミック・リスクである から、必ずしも同じ地域や同じ業種に一様に伝搬するとは限らない。ネットワー クという空間上での近さは、地理的なあるいは業種での近傍とは一致しないか ら、思ってもみなかった意外な部分に影響が現れるかもしれない。 大規模な経済ネットワーク上でのシステミック・リスクをモニタリングし、金 融危機や災害などで大きな数の破綻や破壊が生じた場合に、どのような規模の 影響がどの部分にどれくらいの期間にありそうか、また堅牢であり得る部分は どこであるか。このようなことが分かれば、いつどこにどのくらいの規模で必 要なリソースを投入すればよいか、その指針を立てるための科学的な知見が得 られる。今日そのような目的に資するだけの大規模な実データが利用可能にな りつつあり、大規模な経済ネットワークの構造とその上での破綻とその連鎖に ついて研究が進んでいる。 この講演ではこれらの研究を分かりやすく解説をする。また、地震の余震現象 に見られるような非常に長期的な緩和過程、いわゆる大森則が、経済ネットワー クの大規模な破壊とその伝搬に見られる可能性があることにも触れる。 ---------------------------------