講演者:東 正樹 氏(東京工業大学 応用セラミック研究所) 日時:10月 21日(金) 午後4時30分から 場所: 青山学院大学 理工学部(相模原キャンパス)L棟6階 L603室 題目: 「ビスマスーニッケルペロブスカイトにおけるサイト間電荷移動誘起巨大負の熱膨張」 要旨:  ペロブスカイト酸化物は、磁性、強誘電性、超伝導等の機能の宝庫である。 本コロキウムでは、このペロブスカイトに新しく加わった、巨大負の熱膨張 について講演する。負の熱膨張を示す物質は、コンポジット材料とすること で構造材の熱膨張を補償し、半導体製造や光通信などの精密な位置決めが要 求される分野で使用される。 BiNiO3はBi3+0.5Bi5+0.5Ni2+O3の酸化状態を持つ絶縁体のペロブスカイ ト化合物である。常圧下では500Kで分解してしまうが、2GPa程度の圧力下 では加熱によってBi5+とNi2+の間で電荷移動が起こり、金属相のBi3+Ni3+O3 へと転移する。この際Ni2+からNi3+への価数変化に伴ってペロブスカイト 構造の骨格を作るNi-Oボンドが収縮するため、2.6%の体積収縮が起こる。 Biを一部Laで置換すると転移温度(圧力)が低下し、Bi1-xLaxNiO3にお いては、常圧下の昇温で絶縁体−金属転移と体積の収縮が起こる。この際、 低温相と高温相が互いに分率を変化させながら共存するため、平均の体積は 室温から400Kに渡ってなだらかに減少する。歪みゲージを用いて歪み測定 を行ったところ、既存材料であるマンガン窒化物逆ペロブスカイトの3倍以 上の、-82×10-6/Kという負の熱膨張係数を観測することが出来た。 ---------------------------------