講演者:井上 剛志 氏(国立天文台) 日時:5月 14日(金) 午後4時30分から 場所: 青山学院大学 理工学部(相模原キャンパス)L棟6階 L603室 題目: 「星間媒質の非線形ダイナミクス」 要旨:  銀河の中で星々の隙間は星間媒質と呼ばれるガスで埋め尽く されている。星間媒質は温度百万K以上の完全電離プラズマ成分か ら、温度10Kの冷たい分子雲と呼ばれる水素分子ガス成分までの様 々な温度、密度を持ったガスの混相系を成している。温度100K以 下の星間雲と呼ばれるガス相は星形成の現場であり、その物理状態 の理解は星の形成機構を解明する上で必要不可欠となる。また大質 量星が引き起こす超新星爆発等の強い衝撃波は高エネルギー宇宙線 の加速現場であると共に衝撃波圧縮により星間媒質に進化を促すと 考えられている。 近年計算機の高速化によって流体力学シミュレーションを用いた星 間媒質進化のダイナミクスに対する研究が盛んに行われており、新 しい動的星間媒質論が急速に構築されつつある。本セミナーではま ず原子・分子過程を通した放射冷却過程や超新星爆発による動的エ ネルギー供給等のエネルギー開放系としての星間媒質の基本的性質 を紹介する。その後、星間衝撃波が励起する熱的不安定性と呼ばれ る冷却凝縮機構が星間雲を形成する様子や、それによって明らかと なった星間雲や星形成の最新の理解を、シミュレーションを用いた 我々の研究成果を交えながら解説する。最後にそのような星間媒質 の最新の研究成果が宇宙線加速等の高エネルギー天文学の分野にも 大きな進展をもたらし得ることを紹介する。 ---------------------------------