講演者:妹尾 仁嗣氏(理化学研究所) 日時:6月 19日(金) 午後4時30分から 場所: 青山学院大学 理工学部(相模原キャンパス)L棟6階 L603室 題目: 「擬1次元分子性導体における相競合/共存とフラストレーション」 要旨:  多くの分子性(有機)導体は低次元構造を持ち、そのため低次元系で現われる 特異な物性の舞台として様々な観点から研究されている。本コロキウムでは、 1次元的異方性を持ちバンドフィリングが1/4の「擬1次元1/4-filled系」における 多様な相転移現象を概観した後、最近これらの系に対して我々の行った理論的 研究を紹介する: 1)電荷秩序や「ダイマーモット」絶縁体、および異なる電荷格子パターンを持つ スピンパイエルス状態の競合や共存を数値計算によって調べた[1,2,3]。 詳細な計算を行うことによって実験でみられている相図や物理量の温度依存性と 「1対1」に比較できるレベルに達しつつある。 2)最近、放射光によるX線結晶構造解析の実験によって、DI-DCNQI2Agにおいて 電荷秩序や格子変位が複雑に"mix"した新しい状態が実現していることがわかった[4]。 これは、鎖間結合に「スパイラルフラストレーション」が存在するため単純な電荷秩序 やダイマーモット絶縁体が不安定化し、その結果複雑な「自己組織化」した電荷-格子 パターンが生じるためであることが、平均場近似計算によってわかった[5]。 [1] H. Seo, Y. Motome, T. Kato, J. Phys. Soc. Jpn. 76 (2007) 013707. [2] Y. Otsuka, H. Seo, Y. Motome, and T. Kato, J. Phys. Soc. Jpn. 77 (2008) 113705. [3] Y. Otsuka, H. Seo, Y. Motome, and T. Kato, Physica B 404 (2009) 479. [4] T. Kakiuchi, Y. Wakabayashi, H. Sawa, T. Itou, and K. Kanoda, Phys. Rev. Lett. 98 (2007) 066402. [5] H. Seo and Y. Motome, Phys. Rev. Lett. 102 (2009) 196403 ---------------------------------