講演者:越野 和樹 氏(東京医科歯科大学) 日時:12月 4日(金) 午後4時30分から 場所: 青山学院大学 理工学部(相模原キャンパス)L棟6階 L603室 題目: 「Λ型3準位系を用いた二光子量子ゲートの実装方法」 要旨:  物質の量子力学的性質を最大限に活用して,既存の情報処理技術 を凌駕する性能を産み出す「量子情報処理」は現代物理学の最も挑 戦的な課題の一つである.量子情報の基本単位となる「量子ビット 」を現実の物理系で実装するには,環境自由度との相互作用による デコヒーレンスが無いことが望ましいため,電磁波の基本量子であ る光子が量子ビットの最有力候補の一つとなっている.しかしなが ら,光子の弱点は,単一光子レベルの微弱光では非線形光学媒質を 介した光子同士の相互作用が極めて弱いため,光子による他の光子 の制御が難しい点である.これまでに,線形光学素子を用いて確率 的に動作する量子ゲートが考案されたが,将来のスケーラブル量子 回路への拡張は原理的に不可能である.一方,光子と物質(原子, ドットなどの少数準位量子系)との相互作用は,光子の伝播モード を一次元に制御することにより,単一光子レベルでも有効にはたら くようにできる.本講演では,Λ型3準位系(の2つの基底状態) を光子量子ビットの一時的なメモリとして用いることにより,決定 論的に動作する二光子量子ゲートを提案する.このゲートの動作原 理は従来考えられていた光学非線形性ではなく「光子経路の干渉」 であり,共鳴トンネリングと似たものである. ---------------------------------