講演者:近藤 隆祐 氏(東京大学大学院総合文化研究科) 日時:1月 8日(金) 午後4時30分から 場所: 青山学院大学 理工学部(相模原キャンパス)L棟6階 L603室 題目: 「一軸性圧縮による電子相制御」 要旨:  物性物理学において、圧力印加は、物質パラメーターを連続的に変化させられる 実験手法であり、最近では、強相関電子系の量子臨界点近傍などにおける電子相 の競合を調べるためにも有効であると期待されている。しかし、静水圧力下にお いては、圧力は等方的に印加されるが、試料結晶が等方的に圧縮されるかどうか は明らかでないため、圧力によって変化している物理パラメーターは必ずしも自 明ではない。特に、強相関電子系を持つ試料は、低次元性がその特徴の一つであ る場合が多いため、必然的に結晶に硬さ異方性が存在する。このため、圧力で電 子相制御を行う場合、この点は常に問題となる。 これに対し、結晶を特定方向にのみ圧縮することが可能な一軸性圧縮の方法を用 いれば、圧縮印加方向のパラメーターのみを変化させることが出来るため、精緻 な構造物性を議論することが可能になる。また、静水圧下では圧縮が小さい方向 に試料を圧縮することにより、これまで見出されていない新規な電子相の発見も 期待出来る。講演者等は、この一軸方向に圧縮する方法を強相関電子系の一種で ある有機導体に適用し、発現する様々な電子相を制御する研究に取り組んできた。 講演では、壊れやすい有機結晶に一軸的な圧縮を印加する技術の開発や、これを 用いて講演者等が行った、有機導体における超伝導相と電荷秩序相の競合につい て紹介する。 ---------------------------------