講演者:西野 晃徳 氏(東京大学生産技術研究所) 日時:5月 22日(水) 午後4時30分から 場所: 青山学院大学 理工学部(相模原キャンパス)L棟6階 L603室 題目: 「開放型量子ドットにおける非平衡電流: 多電子散乱状態の厳密解を用いた解析」 要旨:  相互作用共鳴準位模型と呼ばれる開放型量子ドットに対して, 厳密な多電子散乱状態を構成し,これを用いて,系に有限の電位差 を与えたときの電流(非平衡電流)を解析的に計算した[1]. この模型は近年,微細加工技術の発達により,実験的にも大変活発に 研究されているメゾスコピック系の一つをモデル化したものである. 本研究ではこの系を開放量子系として扱い,ドット付近に 電子間相互作用が存在する状況で,多電子散乱状態の厳密解を得た. この散乱状態の注目すべき点は,自由電子平面波として入射される 状態から,ドットでの散乱により,多体束縛状態が現れることである. この多電子散乱状態は,厳密解の手法としてよく知られる ベーテ仮説法[2,3]では構成できない新しい解である. また,入射される電子は,フェルミ分布で特徴づけられる左右の 電子溜において十分熱平衡化されているとして, 有限バイアス下での非平衡電流を解析的に計算した. 得られた電流電圧特性は,相互作用に関する摂動計算[4,5], 数値計算[6]の結果と定性的に一致した. [1] A. Nishino, T. Imamura and N. Hatano, Phys. Rev. Lett. 102 (2009) 146803. [2] V. M. Filyov and P. B. Wiegmann, Phys. Lett. A 76 (1980) 283. [3] P. Mehta and N. Andrei, Phys. Rev. Lett. 96 (2006) 216802. [4] B. Doyon, Phys. Rev. Lett. 99 (2007) 076806. [5] A. Golub, Phys. Rev. B 76 (2007) 193307. [6] E. Boulat and H. Saleur and P. Schmitteckert, Phys. Rev. Lett. 101 (2008) 140601. ---------------------------------