講演者: 田中 秀数 氏(東京工業大学大学院 理工学研究科) 日時:7月 11日(金) 午後4時30分から 場所: 青山学院大学 理工学部(相模原キャンパス)L棟6階 L603室 題目: 「S=1/2籠目格子反強磁性体の開拓」 要旨:  籠目格子反強磁性体は理論的に精力的に研究され,幾何学的フラストレーションと 量子効果の相乗効果によって,新奇な基底状態やエネルギー構造が出現することが知 られている。特にスピンの大きさが1/2の場合には,基底状態が非磁性の1重項状態に なること,そして磁化をもった3重項状態との間に有限のエネルギーギャップ(スピ ンギャップ)があり,その中に無数の1重項励起状態があることが予言されている。 これは他の磁性体には見られないエネルギー構造である。また,最近はDiracフェル ミオンで記述されるギャップのないスピン液体状態が提案されている。しかし,基底 状態として,具体的にどのようなスピン状態が実現しているかについて,理論上の統 一見解はまだない。S=1/2の籠目格子反強磁性体がもつ,この極めて面白い性質は実 験的に検証されていない。そのためモデル物質の探索が精力的に行われている。本セ ミナーでは,最近,私どもが開拓したフッ化物のS=1/2籠目格子反強磁性体A2Cu3MF12: A=Cs, Rb, M=Zr, Hf, Snを紹介する。この中でRb2Cu3SnF12は少し歪んだ籠目格子をも つが,その基底状態はスピンギャップをもつ1重項状態であることが分かった 。これ はS=1/2籠目格子反強磁性体として実験的に初めて見出された基底状態である。 ---------------------------------