講演者: 高須 雄一 氏(聖マリアンナ医科大学 生理学教室物理学分野) 日時:7月 4日(金) 午後4時30分から 場所: 青山学院大学 理工学部(相模原キャンパス)L棟6階 L603室 題目: 「クラスレート化合物のゲストイオンの微視的運動状態と格子振動」 要旨:  効率の良い熱電材料の開発には,高い電気伝導率と低い熱伝導率の達成が必要である。 そのための戦略の一つに「PGEC (Phonon Glass Electron Crystal)」という設計指針が ある。広いカゴ空間をもつホストケージと,その中にルーズに束縛されたゲスト原子と から成るカゴ状構造物質は,この設計指針を実現する熱電材料として注目され盛んに研 究されてきた。I型クラスレート化合物はこうしたカゴ状構造をもつ熱電物質の一つで あり,特に格子熱伝導率の寄与を詳細に調べることのできる系として研究が進められて いる。格子熱伝導率の抑制には,ゲスト原子のincoherentな局所振動が重要な因子であ ると考えられているが,その動的な性質に関しては明らかにされてこなかった。本研究 は,ラマン分光法によりゲスト原子の微視的な動的局所振動を初めて明らかにし,また その発現機構について議論することを可能にした。 本コロキウムでは,熱電変換の機構やラマン分光法の原理を説明することから始めて, ラマン散乱実験によって明らかになったゲスト原子の局所運動を詳細に議論し,その発 現機構を紹介するとともに,格子熱伝導率との関連について議論する予定である。 ---------------------------------