講演者: 新里 隆 氏(東京工業大学大学院 総合理工学研究科) 日時:6月 6日(金) 午後4時30分から 場所: 青山学院大学 理工学部(相模原キャンパス)L棟6階 L603室 題目: 「ランダムスピン系の数理を用いた学習問題の解析」 要旨:   近年一部の大規模統計計算を要する情報処理の問題や 与えられたデータから最適な判断を必要とする確率推論の問題と, 統計力学の数理的構造との類似性が認識されるようになり, 情報科学・学習理論と統計力学の横断的な研究が活発に行われている. 本発表では以下の2部構成からなる. ◎情報理論と統計力学の意外な関係; 自然な拡張として,エントロピーの表現を援用すると, 情報量を定義することができ,またそれ以外にも 確率構造を内包するという「形式的な類似性」や, 情報理論に見られる相転移現象を概説する. @学習理論の相転移現象; 我々が最近行った「入力例題に相関をもつ学習例題 におけるイジングパーセプトロンの記憶容量」を概説する. 既存手法では解析が困難だった学習問題に対して我々は, ランダム直交行列(Haar測度,ランダム直交群)の方法を用い, 記憶容量の評価をレプリカ法とThouless-Anderson-Palmer法の 2種類の解析手法により行った. 前半部分は統計力学と相転移を知っていれば初学者でも 分かる内容ではあるが,補助的にいくつか参考文献を挙げておく. 後半は初学者にも難しいが,できるだけ物理学の知識だけで 閉じるよう,直感的な説明を心がけたい.情報統計力学が気になる方は 参考文献(専門家向け)を参照されたい. Keyword;平衡統計力学,スピングラス理論,相転移構造,情報エントロピー, Shannonの通信路符号化定理,記憶容量,Gardner容量,etc. 参考文献(初学者向け) 「情報の物理学」豊田正著,講談社 「情報の統計力学」篠本滋著,丸善 「学習と情報の平均場理論」樺島祥介著,岩波 「スピングラスと連想記憶」西森秀稔著,岩波 参考文献(専門家向け) 「スピングラス理論と情報統計力学」西森秀稔著,岩波 「確率的情報処理と統計力学」田中和之編著,サイエンス社 「Statistical Mechanics of Learning」A. Engel et. al. Cambridge E. Gardner, J. Phys. A 21, 257 (1988) Krauth et. al., J. Physique 50 3056 (1989) T. Shinzato et. al. arXiv:0712.4050v1 ---------------------------------