講演者: 柴田 絢也 氏(神奈川工科大) 日時:6月 13日(金) 午後4時30分から 場所: 青山学院大学 理工学部(相模原キャンパス)L棟6階 L603室 題目: 「スピントロニクス理論の基礎 -電流誘起磁化ダイナミクスを中心に- 」 要旨:   昨年度のノーベル物理学賞受賞の栄光に輝いた「巨大磁気抵抗」 の研究は、電子のスピン自由度を積極的にエレクトロニクスに利用する 「スピントロニクス」と呼ばれている研究分野を誕生させた。 その中で、ナノスケール強磁性体における「スピン注入磁化反転」や 「電流誘起磁壁ダイナミクス」などのように、直接強磁性金属に 電流を流すことによって、磁化の運動を制御しようとする研究が 盛んに行われている。これは、伝導電子が「スピントルク」と 呼ばれているトルクを磁化に及ぼすためである。 また、最近では、このスピントルクの反作用である逆の現象、 磁化の運動による電流の生成及や起電力の発生に関する研究 に注目が集まっている。 本コロキウムでは、これら、電流と磁化が相互に起因する現象に 関する微視的理論を解説する。具体的には、伝導電子(s-電子)と 局在スピン(d-電子)からなるs-dモデルから出発し、 「ゲージ場の方法」を用いて、この系を空間的に一様な磁化の中を SU(2)ゲージ場と相互作用しながら運動する電子系へと局所変換する。 このゲージ場が磁化の緩やかな時間空間的変化を表す。 今回は、この方法により、電流が流れている非平衡状態において 局在スピン(磁化)にはたらくトルクを考察する。 また、時間に余裕があれば、電流密度をゲージ場に関する線形応答 または非線形応答として計算し、磁化の時間空間変化によって 「スピン起電力」が発生することも考察したい。 ---------------------------------