講演者: 伏屋 雄紀 氏(東京大学大学院 理学系研究科) 日時:10月 17日(金) 午後4時30分から 場所: 青山学院大学 理工学部(相模原キャンパス)L棟6階 L603室 題目: 「ゆらぎ・密度波・超伝導 --- そのくりこみ群的理解」 要旨:  今年2月,擬一次元導体(TMTTF)2SbF6において,Itoiらにより一見不可解 な超伝導のふるまいが報告された[1].通常,スピン密度波(SDW)相に隣接 して現れる超伝導相では,SDW相から離れる(加圧)に従ってその転移温度 は下降する.しかし(TMTTF)2SbF6では,超伝導転移温度がSDW相から離れる につれむしろ上昇することが分かった.このふるまいは従来のスピンゆらぎ による超伝導理論では理解することが難しく,新たな超伝導機構の可能性を 示唆している.  私たちはその可能性のひとつとして,この物質特有の一次元性に着目した. 一次元電子系は朝永・ラッティンジャー液体と呼ばれ,通常の金属(フェル ミ液体)と全く異なる性質を示す.これは,クーパー不安定性(C)とパイ エルス不安定性(P)が対称であり,それらが干渉することに起因する.し かし実際の擬一次元導体は完全な一次元ではない為,この対称性がわずかに 破れる(CP対称性の破れ?).私たちは,この対称性の破れが加圧による超 伝導転移温度の上昇をもたらすことを理論的に示した[3].この結果は,異 なるゆらぎ間の干渉を適切に取り扱えるくりこみ群の方法を更に改良し,新 しく汎関数くりこみ群の方法(N-chain RG)を導入したことにより初めて得 られた.  本セミナーでは,以下の内容をできるだけ分かりやすく説明する. @くりこみ群の基本的な考え方 A-1 くりこみ群の視点に立ったフェルミ液体の再解釈  -2 朝永・ラッティンジャー液体の基礎 B新しい汎関数くりこみ群の方法と最近の研究成果 [1] M. Itoi, et al. J. Phys. Soc. Jpn., 77 (2008) 023701. [2] Y. F., M. Tsuchiizu, Y. Suzumura, and C. Bourbonnais, J. Phys. Soc. Jpn. 76 (2007) 014709. [3] Y. F. and M. Ogata, J. Phys. Soc. Jpn. 76 (2007) 093701. ---------------------------------