講演者: 高野 恭一 氏(青学大理工) 日時: 6月  1日(金) 午後4時45分から(時間が変更されました) 場所: 青山学院大学 理工学部(相模原キャンパス)L棟6階 L603室 題目: 「パンルヴェ関数、ガルニエ関数について」 要旨: 私はここしばらく1変数のパンルヴェ関数、その多変数版であるガルニエ 関数について調べている。これらの関数とは一体何者なのか、自分の研究も 含めて紹介したい。  パンルヴェ関数やガルニエ関数とはそれぞれパンルヴェの微分方程式や ガルニエの微分方程式の解の総称である。パンルヴェとかガルニエとかは、 これらの微分方程式を発見したフランスの数学者の名前である。  19世紀に複素関数論が確立し、なかでも解析接続の概念が明確になって いわゆる特殊関数の理解が進んだ。そのような中、非線形微分方程式によって 定義される新しい特殊関数を見付けようという機運が、19世紀終り頃に盛んに なった。線形の場合と異なり非線形の場合には、解には解ごとに位置が変わ る特異点(動く特異点という)が現れるので、動く特異点は高々極であるよう な非線形微分方程式を見付けるという問題であった。  パンルヴェ(とその弟子のガンビエ)は非常に大きな困難を乗り越えて、 20世紀初頭に6個の2階非線形常微分方程式を見出した。それが今日パンル ヴェ方程式と言われるものである。  この発見とほぼ同時にドイツの数学者R.フックス(有名なL.フックスの 息子)が「第6パンルヴェ方程式は、4個の確定特異点を持つ2階線形常微分 方程式のモノドロミー保存変形方程式である」ことを示した。これは大変重要 な事実で、確定特異点の数を増やしたり、不確定特異点も許すなどの一般化も 可能となった。特に確定特異点の数を増やすことによって得られる連立偏 微分方程式をガルニエ方程式と言う。  この方向の研究は、20世紀前半にはほとんど顧みられなかったが、 1970年代以後に甦った。2次元イジング模型の研究において第3パン ルヴェ方程式が登場したことも復活の一因だったと思われる。  興味ある様々な事実の発見が続いているが、ここでは動く特異点は高々 極という事実(パンルヴェ性と言われる)と関係して、相空間の完備化 (初期値空間の構成)の観点からのお話をする。 --------------------------------- 共催: 青山学院大学 理工学会