講演者: 小形 正男 氏(東京大学大学院理学系研究科准教授) 日時: 6月 29日(金) 午後4時30分から  場所: 青山学院大学 理工学部(相模原キャンパス)L棟6階 L603室 題目: 「量子臨界点における、フェルミ面の再構成:大きいフェルミ面と小さいフェルミ面」(変更しました) 要旨: 一般に相転移温度付近では、臨界現象に付随した揺らぎが発達して いろいろな面白い現象が見られ、理論的にも理解されて来ている。 しかし多くの物質では、系のパラメータを変えることによって、 相転移温度が絶対零度まで下がるということが知られている。 この場合は、有限温度での古典的な臨界点と区別して、量子臨界点と 呼ばれている。 重い電子系物質であるYbRh_2Si_2やCeCu_{6-x}Au_xは、 普通の状態では、温度を下げると反強磁性へ相転移するが、 外場やドーピングによって、この転移温度が絶対零度まで下がり、 量子臨界点となることが知られている。 この場合、従来の量子臨界点に関する理論では説明できない現象が数多く 見られており、新たな描像の必要性が議論されている。 そこで我々は、特に量子臨界点でホール係数が不連続に変化するという 最近の実験に着目し、重い電子系を記述する近藤格子モデルに対して、 変分モンテカルロ法を適用して基底状態の量子相転移を調べた。 その結果、広いパラメータ領域で反強磁性転移とフェルミ面のトポロジーが変化 するという新たな転移の存在を見出した。 つまり、いわゆる大きいフェルミ面から小さいフェルミ面へ転移するという こともできる。これは実験結果ともよく整合していると考えている。 --------------------------------- 共催: 青山学院大学 理工学会