講演者: 新田 伸也 氏(国立天文台/東工大/電通大) 日時: 7月 13日(金) 午前11時から(いつもと時間が異なります) 場所: 青山学院大学 理工学部(相模原キャンパス)L棟6階L603室 題目: 「磁気リコネクションの新しいモデル」 要旨: 今日の高度ネットワーク社会の保全のために、「宇宙天気予報」が学際的重要課 題として取り上げられるようになった(例:学術創世研究「宇宙天気予報の基礎 研究」http://www.kwasan.kyoto-u.ac.jp/spw/)。我々の地球は様々に太陽の影 響を受けているが、太陽風というプラズマと地球磁場の相互作用を通じても大き な影響を受けている。太陽での磁気的爆発現象(太陽フレア)は1ー2日後に地球 磁場に影響する(磁気嵐)。この結果、極地ではオーロラを生じ、渡り鳥やクジ ラが迷子になったり、コンパスが効かなくなったり、航空機等の短波通信障害を 生じたり、極航路旅客機乗員乗客が放射線被曝したり、長距離送電系統や石油パ イプラインに異常な電流が流れ障害を起こしたりする(例:89年北米大停電)。 人工衛星に機能損傷を来す場合もある(例:気象衛星故障、GPSカーナビ誤作動、 衛星放送中断など)。このように、太陽の磁気活動は、今日の高度文明にとって 大きな脅威となる。太陽の磁気活動が地球に与える影響を予測するのが宇宙天気 予報であり、その素過程の一つが、ここで取り上げる磁気リコネクションである。 磁気リコネクションとは、プラズマ中で磁力線が繋がり変わる現象である。多く の場合、磁気エネルギーの解放を伴い、そのエネルギーで引き起こされるのが太 陽フレアや地球磁気嵐である。磁気リコネクションは、プラズマの存在する所、 どこでも生じうる。宇宙の物質のほとんどはプラズマになっているので、宇宙の 至る所で生じるということである。生まれたての恒星(原始星)での高エネルギ ー現象のエネルギー源、我々の銀河の高温プラズマ加熱源、銀河の集団(銀河団) のプラズマ加熱源としても注目されている。また天体の形成のために必要なプラ ズマ粘性の起源としても重要である(つまり、我々が、宇宙の中で今ここに存在 している根源的理由にも関わる)。 しかし、磁気リコネクションに関する従来の標準理論モデル(Petschekモデル) には、天体現象に応用する場合、以下のような重大な欠陥があった:1)広大な宇 宙空間で短時間に時間発展するリコネクションを説明できない、2)磁気エネルギ ー解放パワー(リコネクションレイト)がどのようにして決まるのか説明できない。 本講演では、従来のモデルを概観することによって磁気リコネクションの本質に ついて解説し、その後に従来のモデルの上記欠陥を補える新しいモデル:「自己 相似的時間発展モデル」(講演者のオリジナルモデル:下記文献参照)を示し、 その特性を議論する。 宇宙天気についてのURL(URLs for Space Wether) http://www2.nict.go.jp/dk/c231/shino/swnews/swnews.html (天気予報みたいで楽しいです) http://www.itmedia.co.jp/news/0206/20/nj00_crl_space.html 参考文献(References) Nitta et al., Astrophys.J., 550, 1119 (Apr. 2001) Nitta et al., Astrophys.J., 580, 538 (Nov. 2002) Nitta, Astrophys.J., 610, 1117 (Aug. 2004) Nitta, Astrophys.J., 638, 240 (Feb. 2006) Nitta, Astrophys.J., in press (Jul.1 2007 issue) 新田伸也, 天文月報, 97, 107 (Mar. 2004)(解説論文) --------------------------------- 共催: 青山学院大学 理工学会