講演者: 佐藤 正寛 氏(原子力機構) 日時: 11月 10日(金) 午後4時30分から 場所: 青山学院大学 理工学部(相模原キャンパス)L棟6階 L603室 題目: 「磁場中スピンチューブ模型における 離散対称性の破れと朝永ラッティンジャー液体の共存」 要旨: U(1)対称性と並進対称性をもつギャップのある1次元反強磁性体に磁場を加えて ギャップをつぶすと、一般に対称性の破れのない臨界(ギャップレス)相が 現れることが知られている。臨界相の低エネルギー物理は通常 朝永ラッティンジャー液体で記述可能である。このような臨界相の典型例として、 磁場中のスピン1反強磁性鎖や磁場中の偶数本鎖スピンラダーが挙げられる。 我々は、スピンラダーの自然な拡張であるフラストレーションをもつ 3本鎖スピンチューブ(鎖間方向に周期境界条件が課されたラダー)において 上記の一般的性質が成り立たず、新しい相が生じ得ることを示す。 具体的には、スピンチューブの高磁場領域をスピン波理論と場の理論を用いて 解析し、磁場誘起朝永ラッティンジャー液体相の中にベクトルカイラル秩序 または非一様磁化が発生していることを予言する。両秩序ともに鎖間方向の パリティ対称性の破れを伴う。臨界性と離散対称性の破れが共存することは 古典スピン系から予想されることではなく極めて非自明な結果である。 このような新しい相がスタンダードなハイゼンベルグ型相互作用と ゼーマン項のみから成る系で予言されることを強調したい。 講演では、低次元磁性体の基礎的な事柄から解説していきたい。 時間が許せば、最近合成されたスピンチューブ型物質 [(CuCl_2tachH)_3Cl]Cl_2 [1]と我々の模型との関係についても議論したい。 [1]J. Schnack, H. Nojiri, P. Kogerler, G. J. T. Cooper and L. Cronin, PRB70, 174420 (2004). --------------------------------- 共催: 青山学院大学 理工学会