講演者: 益田 隆嗣 氏(横浜市立大学 国際総合科学研究科) 日時: 10月 27日(金) 午後4時30分から 場所: 青山学院大学 理工学部(相模原キャンパス)L棟6階 L603室 題目:「古典スピン鎖量子ダイマー混合系 Cu2Fe2Ge4O13 の磁性」 要旨:  最近の量子スピン系の実験・理論の進歩により、比較的シンプルな系の理解 は進み、現在ではフラストレーション系など複雑な系が注目されている。この ような流れの中で、Cu2Fe2Ge4O13はFeのS=5/2の古典スピン鎖とCuのS=1/2の量 子ダイマーを内包した2成分系として興味深い[1]。当該物質ではスピン鎖・ ダイマー間に弱い相互作用が存在するため、低温で磁気秩序が現れる。磁気分 散の測定から、10meV程度までの低エネルギー励起は古典スピン鎖のスピン波 でよく説明され、25meV程度にある高エネルギー励起は量子ダイマーで説明さ れることが明らかになった。これら2成分のエネルギースケールは分離してお り、その帰結として(i) Cuダイマーは隣接するFeスピンからの分子場により交 替磁場下に置かれている、(ii)Feスピン鎖間の相互作用は、Fe-Cu-Cu-Feのよ うなダイマーを介した間接的な相互作用としてみなされる、など興味深い状況 が現れる。これらの多くはMF-RPAの範囲内でよく説明されるが、Cuのダイマー 励起に関しては、単純な孤立ダイマーでは説明できない振る舞いが温度依存性 に見られており、理論的な説明が待たれている。本セミナーでは、 Cu2Fe2Ge4O13のバルク測定、中性子回折、中性子非弾性散乱実験など様々な実 験結果を紹介し、古典スピン鎖量子ダイマー混合系のレビューを行う。また、 最近見出された姉妹物質Cu2Sc2Ge4O13[2]についての報告も行う。この物質は Fe鎖が非磁性なScイオンで置き換えられた孤立ダイマーであり、Cu2Fe2Ge4O13 の異常なCuダイマーモードを考える上で理想的な参考物質となっている。 [1] T. Masuda et al.,, Phys. Rev. Lett. 93, 077202 (2004), T. Masuda, et al., Phys. Rev. B 72, 094434 (2005). [2] T. Masuda and G.J. Redhammer, Phys. Rev. B 74, 054418 (2006). --------------------------------- 共催: 青山学院大学 21世紀COEプログラム