講演者: 海老沢 研 氏(宇宙研) 日時: 11月 8日(水) 午後4時30分から 場所: 青山学院大学 理工学部(相模原キャンパス)L棟6階 L603室 題目: 「天の川銀河面からの硬X線放射の起源」 要旨: 我々の銀河の「尾根」とも言える「銀河面リッジ」から2 keV以上の硬X線が放 出されていることは、1980年代始めから知られていた。発見当初から、その起 源は数多くの暗いX線点源の重ねあわせであるという説と、星間空間に広がっ た拡散プラズマ成分であるという説が対立してきた。過去20年以上にわたり、 日本の「てんま」、「ぎんが」、「あすか」、「すざく」を含め、ほぼすべて のX線天文衛星が銀河面リッジを精力的に観測してきたが、その論争にはいま だ決着がついていない。 我々のグループはアメリカのChandra X線天文衛星による深観測に基づき、 Chandraで分解しえる暗い点源の重ね合わせではリッジX線の全フラックスを説 明する事はできず、リッジX線放射は真に広がった成分であると結論付けた (Ebisawa et al. 2001, 2005)。一方、Revnivtsevを中心とするロシアのグ ループは、X線の空間分布が、星の空間分布を表す近赤外線の分布とよく一致 していることから、リッジX線成分は多くのさらに暗い点源の重ね合わせだと 主張しており、現在二つの説が真っ向から対立している。 本講演では、非専門化向けに銀河面リッジのX線観測をレビューした上で、二 つの説の対立点を明確にし、X線天文学に残されたこの大問題に決着をつける ためには、どんな観測を行えば良いかを述べる。 --------------------------------- 共催: 青山学院大学 理工学会