講演者: 田中 秋広 氏 (物材機構 計算材料科学研究センター) 日時:  6月 15日(水) 午後4時30分から 場所: 青山学院大学 理工学部(相模原キャンパス)L棟6階 L603室 題目:「量子スピン系における新しいベリー位相項とその物理」 要旨: ベリー位相(より広くはquantal phase、量子位相)とは何か。 少し荒っぽい言い方が許されるならば、「量子力学に従って何事かが起きる (たとえばスピンが反転する)とき、起き方のパターン(スピンがどのような 中間過程を経て反転するか)同士の間の、波(確率振幅)としての干渉効果を あらわすもの」と言っても良いかと思う。この干渉の結果、古典的な予測とは 非常に違う現象が立ち現れることがある。一次元量子スピン系に関するハルデ インの問題提起(1983年)以来、スピン系においてもベリー位相は実にさまざ まな問題に顔を出すことが認識されるようになり、近年ではエラーに強い量子 計算スキームのキーコンセプトとしても注目されている。 本講演ではまず簡単な例を通してベリー位相の介在がスピン系の性質を劇的に 変えてしまうケースがあることを見る。ついで銅酸化物高温超伝導体のコンテ キストで集中的に研究されてきた二次元反強磁性体に舞台を移し、そこでのベ リー位相効果を考える。πフラックス状態と呼ばれる平均場解を出発点にする と、ちょうど一次元系のハルデインの結果とよく似た、トポロジカルなベリー 位相項が現れることがある、ということが主たる結果である。量子相転移に関 する最近の話題を交えながらその物理的な意味について考察する。 --------------------------------- 共催: 青山学院大学 21世紀COEプログラム