講演者: 加藤 雄介 氏 (東大総合文化) 日時:  6月 24日(金) 午後4時30分から 場所: 青山学院大学 理工学部(相模原キャンパス)L棟6階 L603室 題目:「超伝導体の渦糸(うずいと)の話。」 要旨: 超伝導といえば、「電気抵抗がゼロになる」「磁場は内部に入らない(マイスナー 効果)」状態を指す.しかし磁石と超伝導体の反発で「相撲取り(土佐の海)が 浮いた」のはマイスナー効果のためではない;そのとき、超伝導体には磁力線が 量子化された形で部分的に侵入している。これを「磁束状態」と呼ぶ。量子化さ れた磁力線の周りには超伝導電流が渦のように流れているので、その磁力線を 「渦糸」とも呼ぶ。固体の堅さを決めているのが転位(ディスロケーション)で あるように、超伝導の安定性(堅さ)を決めている主役は渦糸である。本講演で はその渦糸の物理についてお話する。  銅酸化物高温超伝導体の発見以降、「異方的超伝導」としてさまざまな超伝導 体が次々と発見されている。またSTM、核磁気緩和測定、ミューオン磁気緩和測 定などのプローブの進歩により、渦糸状態特有の空間構造を実験的に捉えること も可能になっている。一方で、通常理論的に扱うのが難しい量子系の空間構造も 渦糸状態の場合には「可積分性」に助けられて解析的な理論手法も有効である。 その中でも「渦糸周りの状態密度と核磁気緩和」と「時間反転対称性の破れた 超伝導体の渦糸」についてのわれわれの結果についてお話したい。 --------------------------------- 共催: 青山学院大学 21世紀COEプログラム