講演者: 石原 純夫 氏 (東北大学大学院理学研究科) 日時:  12月10日(金) 午後4時30分から 場所: 青山学院大学 理工学部(相模原キャンパス)L棟6階 L603室 題目:「強相関化合物の軌道状態におけるドーピングの効果 - 動くホールと希釈効果 - 」 要旨: 層状銅酸化物高温超伝導体やペロフスカイト型マンガン酸化物に代表される遷 移金属化合物では、高温超伝導や巨大磁気抵抗効果等の多くの新奇な電子物性 が見出されている。これらの物質では電子間のクーロン相互作用が強いため平 均場近似等の一体近似による記述が破綻しており、本質的に多体効果が重要と なる強相関電子系と捉えられている。その特異な電子状態とこれに起因する巨 大電気磁気応答並びに光学的応答は、電子の内部自由度である電荷、スピンお よび軌道の自由度の結合と分離という立場から理解する事ができる。本講演で は強相関化合物の軌道状態におけるドーピングの効果について最近の研究内容 を紹介したい。ここでは特に軌道秩序状態における(1)動くキャリアーの効 果と(2)希釈効果について述べる予定である。(1)モット絶縁体であるペ ロフスカイト型バナジウム酸化物 RVO3 の基底状態では、2つの特徴的な磁気 ・軌道構造が観測されている。スピン G 型反強磁性秩序-軌道 C 型反強的軌 道秩序(SG/OC)構造と、スピン C 型反強磁性秩序-軌道 G 型反強的軌道秩 序(SC/OG)構造である。両者ではc軸方向のスピンと軌道配置が異なっており、 (SG/OC)ではスピン反強磁性配列であるのに対し、(SC/OG)では軌道の互い 違いの配列である。この物質における3価の希土類イオンを2価のアルカリ土 類イオンで置換する事でホールが導入される。ホールの導入にともない、 (SG/OC)相が急激に消失し、これに代わって(SC/OG)が出現し、やがて金属 絶縁体転移が生じる事が観測されている。このスピン軌道秩序に導入されたホ ールのダイナミクスとスピン、軌道励起について紹介する。(2)遷移金属化 合物 KCuF3 は軌道秩序を示す物質として古くから知られている。最近銅イオ ンを Zn イオンで置換する事で、軌道自由度を希釈する効果が調べられている。 本講演では軌道秩序における軌道希釈効果について、スピン秩序との比較を踏 まえて紹介する予定である。 --------------------------------- 共催: 青山学院大学 21世紀COEプログラム