講演者: 藤井 達也氏(東京大学物性研究所) 日時:  7月9日(金) 午後4時30分から 場所: 青山学院大学 理工学部(相模原キャンパス)L棟6階 L603室 題目:「量子ドットにおける非平衡状態の近藤効果」 要旨: 量子ドットを用いた近藤効果の研究には、従来の希薄磁性合金での近藤 効果の研究にはない特徴がある。その1つとして、ソース・ドレイン間 に有限の電位差をかけ電流を流すと、定常的な非平衡状態が実現してい るという点があげられる。平衡状態での近藤効果は、物理として豊富な 内容をもっていることはすでに様々な側面から確立されてきたものの、 非平衡状態に対しては今まさに進展中の問題となっている。 ソース・ドレイン間に有限の電位差をかけた際の近藤ピークに関して1 つの未解決問題があった。アンダーソンモデルに対して平衡系ではきわ めてよい近似であったクーロン相互作用の2次摂動の結果では、共鳴ピ ークが1つであるのに対し、noncrossing approximation (NCA) やその 他の手法を用いた理論研究、さらには3つの電極をもつドット系を用い た実験では、左右のリード線のフェルミ準位の所に2つのピークが得ら れ互いに矛盾する結果となっていた。 本発表では、それに対して最近我々が非平衡系を取り扱うKeldysh形式に 基づき4次摂動までの計算を行った成果についてお話したい。近藤ピー クは電位差が近藤温度より大きくなる時に確かに2つに分離することを 示す。 さらに明らかとなった興味深い点は、近藤ピークの分離が微分コ ンダクタンスに影響を与え、電位差が近藤温度より大きくなるとゼロバ イアス以外に新しいピークが現れることを見出したことである。量子ポ イントコンタクトにおいて近藤効果が生じていることを示唆する最近の 実験において、微分コンダクタンスにおいて我々の得た結果と同じくゼ ロバイアス以外のピークが得られている。この結果をふまえ、この新し いピーク構造が量子ポイントコンタクトの0.7問題の理解にとって有用で あるかもしれないこともあわせて議論したい。 --------------------------------- 共催: 青山学院大学 21世紀COEプログラム