講演者: 陰山 洋氏(京都大学・理・化学) 日時:  1月 9日(金) 午後4時30分から 場所: 青山学院大学 理工学部(相模原キャンパス)L棟6階 L603室 題目:「新しい幾何学的フラストレーション系の化学と物理」 要旨: 幾何学的フラストレーションは新奇な物性を導くための キーワードであり,三角格子,カゴメ格子,パイロクロア 格子など三角形を基調とした物質が数多く合成され研究 されている.しかし最近になって正方形を基調としたフラストレーション系 が数は少ないがいくつか見つかってきている.その1つで ある S=1/2 Shastry-Sutherland 格子は SrCu2(BO3)2 によって実現 された [1].Shastry-Sutherland 模型で特徴的なのが スピン一重項基底状態が厳密に解けることである. しかしそれ以上に面白いのはトリプレット励起状態である. つまりフラストレーションによって トリプレット励起は非常に局在しやすいという性格をもつ [2,3]. 低温での磁化曲線において 飽和磁化の 1/8,1/4,1/3 の位置にプラトーが観測されるが,これは トリプレット励起の局在・非局在転移と考えることができる. つまり金属絶縁体転移(モット転移)のスピン版である. このような磁場によって誘起された量子現象を我々が最近見つけた 関連物質と比較しながら議論する [4]. 時間があれば最近取り組みはじめている物質開発についても (まだ preliminary ではあるが)紹介したい. 参考論文 [1] H. Kageyama, K. Yoshimura, R. Stern, N. V. Mushnikov, K. Onizuda, M. Kato, K. Kosuge, C. P. Slichter, T. Goto, and Y. Ueda, Phys. Rev. Lett. 82, 3168-3171 (1999). [2] S. Miyahara and K. Ueda, Phys. Rev. Lett. 82, 3702-3705 (1999). [3] H. Kageyama, M. Nishi, N. Aso, K. Onizuka, T.Yoshihama, K. Nukui, K. Kakurai, K. Kodama, and Y. Ueda, Phys. Rev. Lett. 84, 5876-5879 (2000). [4] K. Kodama, M. Takigawa, M. Horvatic, C. Berthier, H. Kageyama, Y. Ueda, S. Miyahara, F. Becca, and F. Mila, Science 298 (2002) 395-399. --------------------------------- 共催: 青山学院大学 21世紀COEプログラム 講演タイトル: 要旨: