青山学院大学 物理学科 コロキウム

2002年度 第8回

下記の通りコロキウムを企画致しました。 講演者の方には、学生の方にもわかりやすいご講演をお願いしてあります。 是非ともご参加下さいますよう、ご案内申し上げます。

なお、今後の予定については www.phys.aoyama.ac.jp/seminars/ を御覧下さい。 また理工学部キャンパスへの交通についてはwww.phys.aoyama.ac.jp/maps/を御覧下さい。
 

(世話人・羽田野 直道・学外からは03-5384-2642・学内からは23107)



講演者:渡辺 真仁 氏(東京大学・物性研究所)

日時: 6月14日(金) 午後4時45分から
場所: 青山学院大学 理工学部(世田谷キャンパス)1号館 5階 1538号室

講演題目:強磁性超伝導体 UGe2 における異常な物性とその起源としての結合した CDW と SDW 揺らぎ
要旨:一昨年、圧力下の強磁性相中で超伝導が発見された UGe2 は、同じ 5f 電子が強磁性と超伝導に共に寄与する最初の物質として注目を集めている。 この物質では、圧力下での上部臨界磁場 Hc2(T) の交差や、電気抵抗がカスプを示す温度 Tx 以下の温度領域における一様磁化の増大、そして、非常に大きな格子比熱の存在など、異常な物性が観測されており、超伝導の発現機構も含めてこれらの現象をいかに理解するか、が問題になっている。

一方、磁化容易軸を正しく考慮した最近のバンド計算によれば、 UGe2 は majority spin のフェルミ面がネスティングし易い構造をもつことが示唆されている。 また、大きな格子比熱の存在、及び電荷密度波(CDW)の存在が実験的に確認されているアルファ-ウラニウムの結晶構造との類似性から、UGe2 では Tx で majority spin のフェルミ面の不完全ネスティングにより、 CDW ゆらぎ(と同時に SDW ゆらぎ)が増大していると考えられる。 また、温度、圧力相図中で Tx が超伝導転移温度の最大値付近に接続することから、 結合した CDW-SDW ゆらぎが超伝導の driving force になっていると考えられる。

講演では、上記の描像を仮定すると、この物質の異常な振る舞いを自然に説明できることを示す。 具体的には、CDW-SDW のモード結合の効果によって Tx での一様磁化が増加し、そのゆらぎによって triplet ペア間に引力が働くことを示す。 さらに、この機構に圧力と磁場の効果を取り入れた強結合超伝導の枠組みに基づいて、圧力下での Hc2(T) が交差することを示す。 また、Tx に向けて CDW と結合したフォノンのソフト化により、格子比熱が増大することを示す。


共催・青山学院大学 理工学会 物理学分科会