青山学院大学 物理学科 コロキウム

2001年度 第7回

下記の通りコロキウムを企画致しました。講演者の方には、学生や分野の違う方にもわかるレベルから始めて下さるようにお願いしてあります。是非ともご参加下さいますよう、ご案内申し上げます。

なお、今後の予定については www.phys.aoyama.ac.jp/seminars/ を御覧下さい。 また理工学部キャンパスへの交通についてはwww.phys.aoyama.ac.jp/maps/を御覧下さい。
 

(世話人・羽田野 直道・学外からは03-5384-2642・学内からは23107)
(この連絡を定期的に受け取りたい方は世話人までご連絡下さい。)



講演者:吉田 篤正 氏(青山学院大学・物理学科)

日時: 6月8日(金) 午後4時半から
場所: 青山学院大学 理工学部(世田谷キャンパス) 一号館 5階 1538号室

講演題目: γ線バースト残光の鉄輝線
要旨: 宇宙の一点から多量のγ線/X線が爆発的に飛来する現象--γ線バーストは、 非常にありふれた現象 (1日に約1回起こる)でありながら、その正体は未だ解 明されていない。しかし、バーストにともなう残光現象の発見以来、この数年 間の研究によって、数10億光年以上の遠方で発生する天体現象であることがはっ きりして来た。現在では、クェーサーとならび最も遠方宇宙(すなわち早期の 宇宙)に起源をもつ現象であると理解されるようになり、天体物理学、天文学 の分野で現在最も注目をあつめる研究分野となっている。

1997年以降現在までに、距離(赤方偏移)の判明したバーストは、18例に達し ている。したがって、これらについては、バーストで開放されたエネルギーを 推定することができる。その結果、γ線が等方的に放射されたとすると、γ線 領域の放射エネルギーだけで1054エルグに達するものがあることが分かって 来た。これは超新星爆発で開放されるエネルギーの実に1000倍に達するもので あり、ビッグバンを除けば、宇宙で最も大規模な爆発現象であるといえる。こ の巨大な爆発現象をどのような天体がひき起こすのか。これは今なお未解明な 問題である。どのような環境でバーストは発生するのかを調べることができれ ば、この問題に強力な手がかりを与えることになる。X線における残光観測は、 この観点から非常に重要である。実際、数例のバースト残光について、X 線残 光のスペクトルに高電離した鉄原子から発生したと思われる輝線構造が観測さ れている。このうちの1例は、われわれのグループが日本の「あすか」衛星を もちいて観測したものである。バースト源近傍に観測可能な輝線を発生するほ どの量の鉄イオンが存在することは驚くべきことであり、γ線バーストの発生 天体について重要な示唆を与えるものである。

本講演では、γ線バースト残光からの鉄輝線観測を軸に、γ線バースト天文 学の現状と将来について解説する。