青山学院大学 物理学科 コロキウム

2000年度 第32回

下記の通りコロキウムを企画致しました。講演者の方には、学生や分野の違う方にもわかるレベルから始めて下さるようにお願いしてあります。是非ともご参加下さいますよう、ご案内申し上げます。

なお、今後の予定については www.phys.aoyama.ac.jp/seminars/ を御覧下さい。 また理工学部キャンパスへの交通についてはwww.phys.aoyama.ac.jp/maps/を御覧下さい。
 

(世話人・羽田野 直道・学外からは03-5384-2642・学内からは23107)



講演者:宮下 精二 氏(東京大学・物理工学科)

日時: 1月12日(金) 午後4時半から
場所: 青山学院大学 理工学部(世田谷キャンパス) 一号館 5階 1538号室

講演題目: 微小磁性体における量子ダイナミックスとデコヒーレンス機構
要旨:
近興味を持たれているナノスケール分子磁性体における 量子ヒステリシス現象を、量子ダイナミックスにおける 非断熱遷移として捉えその特徴を研究してきている。 実際、低温での系の実効的な自由度が小さいためエネルギーレベルは 離散的な構造を持つ。レベル交差のところには いわゆる反発レベル交差の構造ができ、その領域を通過するように 外部パラメター(今の場合、磁場)を掃引すると、掃引速度に応じて 準位間の遷移が起こる。 この現象が、量子ヒステリシスの最も基本的機構であると考えられるが、 実際の実験状況では、系は必ず外部からの揺動にさらされ、 散逸的な振る舞いをする。そのような中でどのように 量子ダイナミックスの特徴が現れるかについて調べている。

まず、反発レベル交差でのエネルギーギャップが非常に小さいときは たとえ外場を一定にしても、環境からの揺動のため 系はランダムな反発レベル交差を繰り返す。このような場合に 磁化の初期緩和が単純な指数関数的なものでなく、時間の平方根を 肩に持つストレッチト指数関数になることを、量子ランジェバン方程式を 用いて示した。

また、反発レベル交差でのエネルギーギャップが大きいときは、 系はほぼ断熱的に振る舞うが、掃引中の熱の流入のため磁化過程に プラトーが現れることも見いだした(磁気フェーン効果)。 このように、環境からの散逸効果の中にも、 量子ダイナミックスの特徴が現れることがわかってきた。

このような局所磁化の運動は必ずしもナノスケール分子磁性体に限らず ギャップスピン系で不均一構造によって誘起される磁化におけるダイナミックス にも触れる。


共催・青山学院大学 理工学会 物理学分科会