青山学院大学 物理学科 コロキウム

2000年度 第29回

下記の通りコロキウムを企画致しました。講演者の方には、学生や分野の違う方にもわかるレベルから始めて下さるようにお願いしてあります。是非ともご参加下さいますよう、ご案内申し上げます。

なお、今後の予定については www.phys.aoyama.ac.jp/seminars/ を御覧下さい。 また理工学部キャンパスへの交通についてはwww.phys.aoyama.ac.jp/maps/を御覧下さい。
 

(世話人・羽田野 直道・学外からは03-5384-2642・学内からは23107)



講演者:播磨 尚朝 氏(大阪大学・産業科学研究所)

日時: 12月1日(金) 午後4時半から
場所: 青山学院大学 理工学部(世田谷キャンパス) 一号館 5階 1538号室

講演題目: MB6とMB2C2(M=La, Caなど)の電子構造
要旨:
 高温弱強磁性体として注目されているCaB6の電子構造を理解する上で、 1970年代か ら十数年に渡るLaB6のフェルミ面の研究を紹介し、 最近のLaB2C2のフェルミ面の研究、 CaB6とCaB2C2の電子構造の類似性などを解説する。

フェルミ面はフェルミ準位近傍の電子状態しか反映しないが、 物質固有の物理量であり理論計算と実験とが極めて精密に比較出来る物理量である。 従って、フェルミ面の研究を通じて一電子近似のバンド計算の定量的な正当性を検証することが出来る。 LaB6のフェルミ面の研究は化合物としては極めて初期の70年代に行われ、 一見奇妙な形のフェルミ面を仮定する事で決着したかに見えた。 しかし、その後の80年代に音響dHvA効果の測定を契機に従来のフェルミ面モデルに対する疑義が深まり、 1988年になって局所密度近似の補正やdHvA信号強度を考慮する理論的考察により、 もう一種類のフェルミ面が存在する事が示され、最終的に決着した。 一方、MB2C2は古くからその存在は知られていたが、 最近になって初めて結晶構造が明らかになり、 合わせてLaB2C2などのdHvA効果の測定が行われ、 その形状が明らかになった。 これらフェルミ面の研究の紹介に加え、 MB6とMB2C2の電子構造の特徴と類似性を分子軌道の立場にたって解説する。 講演では初学者にも理解出来るように、バンド計算の基礎となる密度汎関数法やバンド計算の方法などにも触れる予定である。


共催・青山学院大学 理工学会 物理学分科会