2000年度 第5回
下記の通りコロキウムを企画致しました。講演者の方には、学生や分野の違う方にもわかるレベルから始めて下さるようにお願いしてあります。是非ともご参加下さいますよう、ご案内申し上げます。
なお、今後の予定については www.phys.aoyama.ac.jp/seminars/
を御覧下さい。 また理工学部キャンパスへの交通についてはwww.phys.aoyama.ac.jp/maps/を御覧下さい。
講演者:中田 恭子 氏(青山学院大学・理工学部)
日時: 5月26日(金) 午後4時半から
場所: 青山学院大学 理工学部(世田谷キャンパス) 一号館 5階 1538号室
講演題目: ナノグラフィトの電子状態
--ナノスケールグラファイトにおけるπ電子局在状態--
要旨:
理論化学の分野で古くから調べられて来た芳香族炭化水素と、物性物理の分野で古くから調べられて来たグラファイトとは、どちらもsp2炭素のつくるπ電子ネットワークである。
ベンゼンやナフタレンなどの小さな芳香族分子が住むミクロな世界と、グラファイトが住むマクロな世界との間に、「ナノグラファイト」の住む領域がある。
ナノグラファイトとは、ナノスケールのグラファイト断片とでも言うべき存在のことである。
炭素骨格上に広がるπ電子ネットワークがナノスケールで終端されることによって、ナノグラファイトは様々な電子状態を見せる。
特にzigzag端を持つナノグラファイトリボンは、フェルミ準位近傍に「エッジ状態」というπ電子局在状態を示す。
エッジ状態は、波数2π/3 < k ≦πの領域に E=0 の部分フラットバンドとして現れ、リボンの幅がナノスケールのときには、フラットバンドによる状態密度のピー
クを E=0 に生じる。
強結合近似に基づくと、zigzag端を持つナノグラファイトがエッジ状態を生じるからくりを明確に示すことができる。
当日は、ナノグラファイトのエッジ状態について、モデル計算と第一原理計算の両面から詳細に議論し、新規な物性を有する炭素材料の開発に向けた実験グループとの共同研究も紹介する。
共催・青山学院大学 理工学会 物理学分科会