コロイド分散系とは、nm からμm 程度の大きさを持つ物質(分散相)が媒質の中(分散媒)に分散している状態の総称です。
この系は、分散媒と分散相がそれぞれ明確な相であるので、系の中には界面が含まれます。
一般に、界面ではエネルギーが高いので、エネルギーを下げるために界面を少しでも少なくしようと粒子同士が凝集しようとしますが、我々が用いている単分散ポリスチレンラテックス球のコロイド分散系では、
その粒子は水中で表面に水酸基
(SO
4
2-)
を負に帯電しているので、電気二重層による反発力と分子間力による粒子間引力の相対的な大きさを論じ、微粒子の分散・凝集現象を解明した
DLVO 理論により、イオン強度が低い場合には安定に分散することが示されています。
また、他にも身近な例として、コロイド系は次のものをあげられます。
以上のような単純コロイドと呼ばれる系では、分散質と分散媒との間に明瞭な区別が出来ています。
また、コロイド粒子が規則正しく並び、安定している状態をコロイド結晶と言い、この結晶は目に見える結晶のモデルとして知られています。
本研究では主に単分散ポリスチレンラテックス球が純水中に分散している系(コロイド分散系)について考えており、コロイド粒子に働く相互作用や、コロイド粒子の作る秩序構造であるコロイド結晶中の粒子の運動を解析しています。
光が物質に与える放射圧の強さはコロイド粒子に働く力と同程度です。その性質を利用して、レーザー光をレンズで集光してコロイド粒子に照射すると、レーザーの中心軸に粒子を吸い寄せることができます。
これを応用していくと、コロイド粒子の動きを捕捉することができ、自由に動かすことができます。この手法をレーザートラップまたは光ピンセットと呼ばれています。これを受けて、当研究室ではL.M.Mを作製しました。
コロイド分散液を、イオン交換樹脂を用いて十分に脱塩すると水溶液中のイオン濃度が下がり、電気二重層の増大によってコロイド粒子の表面の電荷の及ぶ範囲が広くなり、粒子同士に斥力が働きます。
この方法を用いて、ある体積分率で作製したコロイド結晶を、ビデオカメラ(30psまたは300ps)を用いて録画したものをプログラムにより我々の理論によって解析しています。
高分子とコロイド粒子を混合した系で粒子間に働く枯渇凝集引力を初めて直接測定し、その存在を確かめ、理論の検証に成功しました。(2000)
またこの手法を進化させ,粒子間のポテンシャルを精密に測定するシステムを開発し,DLVO 理論として知られる普遍的な粒子間相互作用の測定を行っています。
2008年度の現状
コロイド結晶中の粒子の運動は、つい最近まで、格子点を中心としたそれぞれ独立な調和振動子のポテンシャル中を拡散するモデル(調和振動子モデル-BHOモデル-) で説明が試みられていました。しかし、このモデルから予測される粒子の運動(平均自乗変位もしくは自己相関関数、さらに粒子間の相関) は実測されるものと大きく異なり、このことが大きな問題となっていました。
我々は溶媒に浸された結合振動体(バネ-ビーズ格子) モデル(OBSモデル)を導入することによって、粒子間の相関も説明することができました。
2008年度の現状
更新履歴:2008年10月