Zero resistance v.s. Meissner effect

ゼロ抵抗状態は、ジュール熱を発生させずに電流を流せる利点から、強い磁場を作る超伝導磁石に応用され、送電ケーブルや電力貯蔵への応用が期待されています。一方、マイスナー効果は、磁気浮上効果としてよくデモンストレーションされ、一見、ゼロ抵抗状態に由来する効果と考えられがちですが、そうではありません。
 ゼロ抵抗(すなわち、ゼロ電圧)状態の物質にファラデーの電磁誘導則を適用すると、ゼロ電圧状態では磁束が時間変化せずに一定値を取ることが示されます(dΦ/dt=0)。この場合、ゼロ磁場中(Φ=0)と磁場中(Φ≠0)でゼロ電圧状態における物質内部の磁束状態が変わってしまうので(図1)、物質の電気抵抗がゼロとなる温度(超伝導転移温度)をTcとすると、物質をTc以下まで冷却してから磁場を印加する場合(図2の経路1)と磁場を印加してから物質をTc以下まで冷却する場合(図2の経路2)とで物質内部の磁束状態が異なるため、熱力学的に不安定な状態になってしまいます。
 しかしながら、(2)のマイスナー効果では、たとえ磁場中でも物質内部から磁束が排除されるため、図2に示す経路によらず、Φ=0の状態(マイスナー状態)が実現します。すなわち、超伝導状態はゼロ抵抗状態とマイスナー状態が同時に実現する状態であり、永久磁石を高温にすると常磁性体に変化するのと同じように、高い温度や強い磁場によって超伝導状態が消失する熱力学的な相転移現象の一種であると理解されます。

Meissner

図1 ゼロ抵抗状態における物質内部の磁束状態

Meissner2

図2 ゼロ磁場冷却と磁場中冷却