第18回 林忠四郎記念講演会

  • 佐藤文隆先生
「林先生と湯川秀樹・南部陽一郎」

講義内容:
林忠四郎が大学を卒業する頃、日本はアメリカとの戦争に突入し、林も大学は2年半で学徒動員で徴兵され、敗戦までの4年余を海軍で過ごしました。 しかし、その直前、東大物理の学部3年生の半年の間に、ベーテの原子核の論文とガモフの星がニュートリノで冷えるという最新の論文を読みました。 この時にこれらの英語の論文を一緒に読んだ同級生のひとりが南部陽一郎でした。 戦争が終わり、林は実家のあった京都市に帰り、京大物理の湯川秀樹の研究室に入りました。 しかし、研究室は軍隊から解放された学徒動員の人たちでごったがえしており、各自は自分でテーマを見つけて研究をスタートさせねばなりませんでした。 林は4年前に勉強したことのある原子核と宇宙の問題をテーマとして、海外の書籍を自学自習し、世界に知られる研究を発表するようになりました。 その後、大阪の大学に赴任した南部と再会して素粒子論に取り組んだこともありましたが、南部が渡米したこともあり、また湯川の強い勧めもあって、 林は宇宙の問題に全面的に取り組むようになり、多くの研究者を育て、大輪の花を咲かせたのです。

略歴

1938年 山形で生まれる
1960-1974年 京都大学大学院・林研究室で宇宙物理学,一般相対論を研究し,同大学助手,講師等を務める
1974-2001年 京都大学教授,基礎物理学研究所所長や理学部長を務める
1974-2014年 日本学術会議会員,日本物理学会会長,湯川記念財団理事長などを歴任
2001-2014年 甲南大学教授

著書

「アインシュタインが考えたこと」(岩波ジュニア新書)
「宇宙論への招待」(岩波新書)
「孤独になったアインシュタイン」
「火星の夕焼けはなぜ青い」
「雲はなぜ落ちてこないのか」
「夏はなぜ暑いのか」
「現代物理学叢書 宇宙物理」
「現代物理学叢書 一般相対性理論(共著)」(以上,岩波書店)
「歴史のなかの科学」
「量子力学は世界を記述できるか」(以上,青土社)
「アインシュタインの反乱と量子コンピュータ」(京都大学学術出版会)
など多数。

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