講演者:澤田 真理 氏(青山学院大学理工学部) 日時:6月 8日(金) 午後4時30分から 場所: 青山学院大学 理工学部(相模原キャンパス)L棟6階 L603室 題目: 「超新星残骸のあたらしい進化シナリオ」 要旨:  恒星はその最期に超新星爆発をおこし、星間空間にエネルギーと重元素をばら まく。したがっ て銀河や宇宙の構造進化と化学進化を理解する上で重要である。 爆発の痕跡として高温プラズマ が残される(超新星残骸)。これはX線で明るく、 そのスペクトルから熱的エネルギーや元素組 成が測定できる。  X線観測と理論の両面から、熱的プラズマの標準進化モデルが確立されてきた: まず、爆発噴 出物が星間空間を超音速で膨張する。その先端に生じる衝撃波が 周囲のガスを加熱し、球殻状の プラズマを形成する(シェル状構造)。この中で は、高温電子が重元素イオンを電離し始める。 プラズマは電離過程と再結合過 程がつりあう電離平衡状態へと進化するが、密度が~1 cm-3と希薄 なため、こ の緩和には数万年を要し、その間、電離が再結合を卓越する(電離優勢プラズマ)。  近年のX線探査は、シェル状ではなく中心集中したX線放射をもつ「非標準型」 残骸を多数発 見した。この奇妙なグループは、いまや標準型より多く知られて おり、銀河中心部や銀河面の活発 な星形成領域に付随する。したがって銀河全 体への元素・エネルギー注入を理解する上で、非標 準型をつくる未知の進化シ ナリオを解明することが重要である。  我々はすざく衛星を用いて銀河面の超新星残骸W28から強い再結合連続線を検 出した。 これ は、イオンの電離度にくらべ電子温度が低いために再結合過程が 電離過程を卓越する「再結合優 勢プラズマ」に特有のスペクトル構造である。 再結合優勢プラズマは最近われわれのグループがた てつづけに発見しており、 そのすべてが中心集中構造をもつ。そこで、再結合優勢プラズマの熱的 進化を 手がかりに、非標準型残骸の起源解明を試みた。 ---------------------------------