講演者:西尾 豊 氏(東邦大学理学部物理学科) 日時:10月 5日(金) 午後4時30分から 場所: 青山学院大学 理工学部(相模原キャンパス)L棟6階 L603室 題目: 「有機伝導体が示す磁性と伝導が絡み合った特異な相転移」 要旨: 有機分子BETSから構成される伝導層と磁性イオンFeX4 (X=Cl,Br)から成る 絶縁層が交互に積み重なったλ, κ-(BETS)2FeX4は擬2次元結晶構造を形成 している。Fe 3dスピンを含む対イオンはBETS分子のπ電子系にキャリアー を発生させるだけでなく、伝導電子と局在スピンの間に伝導電子のπ電子と3d スピンに働く磁気的相互作用(π-d相互作用)をこの系に導入する。強いπ-d相 互作用をもつλ型構造を持つ結晶は、基底状態が反強磁性絶縁体状態となるが、 比較的弱いπ-d相互作用を持つκ型結晶では、局在スピンの反強磁性秩序と超 伝導状態が共存する。π-d相互作用がはたらいた有機伝導体で引き起こる多彩 な相転移の根底には伝導電子と局在スピンが作る低次元構造という共通の舞台 があり、それらは磁気相互作用と伝導の僅かなパラメータの違いから劇的にそ の電子状態を変化させる。この魅力的な系を紹介する。 ---------------------------------