講演者:御領 潤 氏(ETH Zurich/東大生研) 日時:5月 15日(火) 午後4時45分から 場所: 青山学院大学 理工学部(相模原キャンパス)L棟6階 L603室 題目: 「SrPtAsの超伝導」 要旨:  超伝導はフェルミ面上にある2電子間に引力相互作用がはたらき クーパー対が出来る事によって生じる。そしてクーパー対の波動関数の 対称性と結晶の対称性の間には密接な関係があることが知られ ている。CePt3Siの超伝導の発見以降、空間反転(座標軸の向きを反転させる)変換 に対する対称性を破る結晶中の超伝導が脚光を浴びている[1]。 クーパー対の対称性の観点から言うと、このような系では偶関数であるスピン1重項状態 と、奇関数であるスピン3重項状態の混ざりが起こり得ることが特徴的である[1,2]。 最近ではさらに進んで、結晶全体としては対称であるが局所的に反転対称性が破れている 系の議論が行われ始めている[3]。現実の物質として昨年発見された SrPtAs(Tc=2.4K) の超伝導がある[4]。 この物質は(i)ヒ素を含んでいたり、(ii)PtAs面が蜂の巣格子構造を持っている、 (iii)多バンド構造を持つ、など、局所的な空間反転の破れと同時に様々な興味深い 性質を併せ持っている。しかし現段階では電気抵抗や磁化の測定以外ほとんど 手つかずの状態である。 今回は、SrPtAsで出現し得るクーパー対の対称性について議論したい[5]。 対形成の相互作用として(現段階ではまだ詳細な情報がないため最も 単純な形である)広がりを持った密度-密度型引力相互作用を仮定 し、ギャップ方程式を解く。その結果、この物質のバンド構造は スピン1重項カイラルd-波状態とスピン3重項カイラルp-波状態 が混ざり合った状態(いずれも時間反転対称性を破るトポロジカルな 超伝導状態)を安定化する傾向があることが解る。そしてこの 混合カイラル状態から期待される現象についても触れてみたい。 [1] E. Bauer, et al, Phys. Rev. Lett. 92, 027003 (2004); P. A. Frigeri, et al, Phys. Rev. Lett. 92, 097001 (2004) [2] N. Hayashi, et al, Phys. Rev. B76, 092508 (2006) [3] D. Maruyama, Y. Yanase, and M. Sigrist, J. Phys. Soc. Jpn. 81 (2012) 034702 [4] Y. Nishikubo, K. Kudo, and Minoru Nohara, J. Phys. Soc. Jpn. 80 (2011) 055002 [5] J. Goryo, M. H. Fischer, A. Schnyder, and M. Sigrist (in preparation) ---------------------------------