講演者:井村 健一郎 氏(広島大学先端物質科学研究科) 日時:1月 13日(金) 午後4時30分から 場所: 青山学院大学 理工学部(相模原キャンパス)L棟6階 L603室 題目: 「『なんちゃって』素粒子物理学」 要旨:  20世紀初頭から1920年代にかけて、相対論と量子力学という現代物理学、 に限らず21世紀を生きる我々現代人の生活と価値観の根底に位置する2つの 革命的アイディアが人間という生命体の頭脳の中に初めて登場した。この2 つの革命的理論は既存の(20世紀初頭までの)物理学の諸問題、あるいは内 部矛盾をことごとく天才的に解決していったにも関わらず(つまり、両理論 の正当性に何ら疑いの余地はなかった)一方で、両者の折り合いはと言うと 「びみょー」な感じであった。  この天才的ではあるがあまり仲の良くない2つの理論の間を取り持ち、さ らに実はまさにその二人の関係がギクシャクしていることにこそ深い科学的 真実が潜んでいることを見抜いたのが、Paul Adrien Maurice Dirac (1902-84)である。Dirac方程式によって記述されるDirac粒子(例えば、 電子)は人類がそれまで抱いていた「粒子」という概念を根底から覆した。 例えば、Dirac粒子は壁には反射しない(Kleinトンネル);一方Dirac粒 子は止まることはできるがその自転をやめることはできない(スピン1/2); Dirac粒子には反粒子が存在する、等々。また、Dirac粒子は時空の歪みに 敏感に反応する(→量子重力理論)。  一方、相対論の要請からDirac粒子は一般に光速cよりもゆっくり動く。 が、もちろんそれには例外があって・・・(質量がゼロの時)しかもこの状 況の取り扱いはかなり微妙:例えば、変な粒子の存在が示唆される―Weyl型 とMajorana型。以上、一見ナノサイエンスと何の関係もなさそうな話しを 延々と述べてきたが、私の専門は物性物理学である。なので、本コロキウム では当然「もの」(しかもダークマターとかそういうやつではない・・・) に基づいた話しをする。 ---------------------------------