講演者:有田 亮太郎 氏(東京大学大学院工学系研究科) 日時:1月 28日(金) 午後4時30分から 場所: 青山学院大学 理工学部(相模原キャンパス)L棟6階 L603室 題目: 「ゼオライトにおける相対論的強相関s電子系の第一原理計算」 要旨:  一般に強相関多体効果は3d遷移金属の化合物などで期待され、スピン軌道相互作用などの相対論効果は周期律表で下の方に並ぶ重い元素で期待される。一方で、アルミニウムやシリコン、酸素といった、クラーク数の高い、いわゆるユビキタス元素の組み合わせで強相関効果や相対論効果を発現させることができれば非常に興味深い。 アルカリ金属のクラスターを吸蔵させてできるゼオライトは、直径10Å程度のゼオライトの籠をあたかも一つの巨大な原子(超原子)とみなすことができるユニークな系である。この超原子の性質は、籠のサイズや中にはいるアルカリ金属クラスターの種類やサイズで大きく変化し、時に系の構成要素の原子の名前(アルミニウム、シリコン、酸素)からは無縁と思われる物性を示す。この多彩な物性は、縮退ハバード模型の言葉で理解できることが期待される。 本講演では、ゼオライトの低エネルギー物性を記述する縮退ハバード模型の相互作用パラメータ、スピン軌道相互作用の第一原理的評価の結果を紹介し、ゼオライトにおいて、骨格構造とゲストクラスターの適切な選択により、3d, 4d, 5d系に対応する超原子系が実現することを示す。 参考文献 (1) Y. Nohara et al., Phys. Rev. B 80 220410(R) (2009) (2) K. Nakamura et al., Phys. Rev. B 80, 174420 (2009) (3) R. Arita et al., Phys. Rev. B. 69, 195106 (2004) ---------------------------------