講演者: 竹谷 純一 氏(大阪大学理学研究科) 日時:11月 21日(金) 午後4時30分から 場所: 青山学院大学 理工学部(相模原キャンパス)L棟6階 L603室 題目: 「有機半導体結晶のエレクトロニクス」 要旨:  有機ELディスプレイの薄型TV商用化への動きが加速し,有機 エレクトロニクスへの関心が益々高まっている。 有機薄膜トランジスタは,アクティブマトリクスディスプレイや 電子ペーパーの制御用デバイスを,プリンティングや蒸着などの 簡単なプロセスによって低価格供給できる非常に有望な技術で あるため,現在特に活発な研究開発が行われている。 直近の応用に向けた対象が、有機低分子の多結晶薄膜トランジスタ 及び、有機高分子の薄膜トランジスタであるのに対して、本講演 では最近開発した、有機単結晶を半導体活性層とする「有機単結晶 トランジスタ」について紹介する。有機半導体単結晶では、有機分子が ほぼ完全な周期性をもって配列しているため、高分子薄膜における 構造の不規則性や低分子多結晶薄膜における結晶粒界の影響が 排除された、より理想的なトランジスタ特性が得られると期待される。 実際、有機単結晶トランジスタでは、薄膜トランジスタよりも 1桁高い20-40 cm2/Vsに達するキャリア移動度が得られた。 このように、単結晶材料を用いたより理想的なトランジスタ素子 を用いることにより、有機半導体材料のもつ本来の伝導性能を 引き出し、有機トランジスタの最高性能を引き出すことが可能となる。  有機単結晶トランジスタ研究の目的は、有機半導体中に導入される キャリアの伝導メカニズムの詳細を明らかにし、更なるトランジスタ 性能の向上のための指針を得ることにもある。講演では、 有機トランジスタのホール効果について紹介し、高移動度の 単結晶トランジスタにおいてはキャリアが分子間にも広がって "バンド伝導"が実現していることを示す。講演の最後には、 有機単結晶トランジスタとしては大気中で動作するn型トランジスタ などの新型トランジスタ構造についても紹介する。 ---------------------------------